サロン情報詳細


【誌上テーマ別サロン】第122回 <基礎講座>   “強み”の活用によって承継を可能にする経営を! ―「中小企業経営学入門」(122)―
【誌上テーマ別サロン】第122回
<基礎講座>
  “強み”の活用によって承継を可能にする経営を!
―「中小企業経営学入門」(122)―
1 スモール・ビジネスの承継を支えるもの
・スモール・ビジネスの承継は、むずかしく、経営的にうまくいっていても、後継者が不在で、ままならないという。ましてや、経営的にうまくいかず、業績も悪ければ、後継したくても、前向きになれない人もいるであろう。
・しかし、前者の場合には、まだ承継の可能性があるといえる。これに対して、後者の場合、なにか特別の秘策でもあれば、承継は可能になるが、おおむね無理ということになる。
2 “強み”の活用による承継
・なにか特徴のある製品やサービスをつくり、他社のものとちがいがあり、それが顧客や消費者にそこそこうけいれられ、経営的にうまくいっている場合には、承継しようとする人があらわれるものと思われる。そのビジネスをおこなっていた人間が病気になったり、死亡しても、後継者がでてきて、承継される可能性がある。
・また、そのような製品やサービスをつくって、自負心をもっている経営者であれば、なんとか自分のつくったものを残したいと思うから、みずから承継する人間をさがしもとめることであろう。
3 「風雅食堂(ふうがさかば)」の事例
・ブタのひき肉とニラのピリカラあんかけがたっぷりかかっている「スタミナラーメン」は、埼玉県のさいたま市などの「娘娘(にゃんにゃん)」や「漫々亭」で提供されている地元ではよく知られたメニューである。
・約40年前に青森県出身者がつくった味であり、浦和駅周辺にある「風雅食堂」は、2018年まで「娘娘」があったところで営業している。店主の田中雅人と直子夫妻が経営し、スタミナラーメンは常連客に人気があった。しかし、18年2月に田中の死去とともに「娘娘」はいったん閉店している。
・閉店後、スタミナラーメンを食べたいという声が大きくなり、「娘娘」の客でもあった平井則幸がこれを復活させている。平井は居酒屋を経営しているが、店名を「風雅食堂」に変えて再オープンさせている。
・店名は変わったものの、店主であった雅人の風が現在も吹いているというのであり、人気のあったかれのつくった味を残すことを大切にしている。要するに、強みをいかすことで、「風雅食堂」は承継を可能にしている。そして、スタミナラーメンの味つまり「風雅」は、まさに同店の最大の経営資源になっており、それが後継者を出現させていると考えられる。
・このような承継事例は、ほかにも多くあることであろう。力のある人気商品やサービスがあれば、その強みをいかして、スモール・ビジネスは必ずや存続できるものと確信している。
(2019.9.22稿)
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
Information
  • 開催日2023年5月5日
  • 場所
  • 時間
  • 費用