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【誌上テーマ別サロン】第12回

<基礎講座>
経営内部の分離からみたスモール・ビジネス
―「中小企業経営学入門」(12)

1 「経営と労働の分離」から「経営内部の分離」へ
・1人企業はまさにワンパーソン企業であり、所有と経営だけでなく労働もその人間が担当しており、「所有、経営、労働」の三位一体が見られている。しかし、業務量がひとりでさばくことができなくなると、経営者は従業員を雇用する。もっとも、雇用することになると、人件費が必要になるから、雇用には慎重にならざるをえない。
・数名の人間を採用して、自分が行っていた仕事のかなりの部分をこれらの人間にお願いすることで、経営者は経営の仕事と従業員に割りあてたものの残余分を担うことになる。レストランの経営者はこれまでは料理をすべて作って、お客に提供していたが、雇用したことで一部の料理しか作らなくなり、店舗全体の動きをみながら、顧客サービスの提供がうまくいくことに注力する。
・しかしながら、店舗が大きくなり、2階や3階のビルになり、個室が増えたりするかもしれない。また、いろいろな種類の料理をだしたり、多店舗展開をするようになると、多くの人材が必要となり、ひとりの経営者では対応できず、管理者を配置して従業員を間接的にコントロールせざるをえなくなる。それだけでなく、料理担当の経営者、店舗担当の経営者、食材調達の経営者などとその下に管理者を配置しなければならなくなる。これが経営内部の分離である。

2 階層分化と職能分化の進展による経営内部の分離
・経営者のもとに管理者を配属することは、企業に階層ができるという「階層分化」を示し、主な仕事別に担当の経営者・管理者を配置することは、「職能分化」であり、この両者が進展することで経営内部の分離がいっそう貫徹されていく。大企業は、経営者や管理者のもとで働いている従業員のなかでの労働内部の分離とあわせて、この経営内部の分離が貫徹している組織なのである。それは1人企業や小規模企業とは反対の極にある。

3 「ソフトな組織」としてのスモール・ビジネス
・大企業の組織は以上で述べた階層分化と職能分化による経営および労働内部の分離がおしすすめられた、いわゆるハードな「官僚制組織」である。これに対して、スモール・ビジネスはそのようなふたつの分化があまり行われていないソフトな組織なのである。それは組織の構造(仕組)をつくるよりも、みずからの力を発揮して、現有の働く人びとを結集させることに力点をおいている組織である。

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
[2015.9.8]

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  • 開催日2015年9月8日
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