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【誌上テーマ別サロン】第116回 <基礎講座>   協調しつつ、競争する農家のネットワーク ―「中小企業経営学入門」(116)―
【誌上テーマ別サロン】第116回
<基礎講座>
  協調しつつ、競争する農家のネットワーク
―「中小企業経営学入門」(116)―
1 連携するスモール・ビジネスのネットワーク
・経営資源が不足しているスモール・ビジネスが、そのパワーを発揮するために、たがいに連携して、ネットワークを組むことも大切である。同業者がネットワークを組むだけでなく、イノベーションを起すためには異業種のスモール・ビジネスが連携することも行われている。また、ICTやグローバル化のなかでは、地理的に離れている企業どうしでも、それは可能になっている。
2 鎌倉市農協連即売所の事例
・地元では「連」と「売」をつなげて「レンバイ」といわれる鎌倉市農協連即売所の起源は古く、1928(昭和3)年のことである。90年の歴史をもつが、約40軒の独立農家の協力でスタートした直売所である。
・現在では、3代目、4代目となる20数軒の農家が6軒ぐらいでグループをつくり、4班が1日1班の順で、自分のところで育てた野菜(西洋野菜を含む)を売りだしている。それぞれの農家は4日おきに出店するために、1日は出店販売、1日は出店のための収穫、そして農作業に2日を要していることになる。
・「レンバイ」で売られているものは、「鎌倉野菜」という地域ブランド名をもつようになり、とくに西洋野菜の人気は高く、イタリア料理やフランス料理のシェフの評価は高い。したがって、個々の農家の少量多品種の野菜づくりの意欲は高く、研究熱心でもある。
・したがって、「レンバイ」は農家どうしの協調関係で運営されているが、いい商品をつくろうとして、たがいに競争しているネットワークになっている。
・ほぼ年間を通じて午前8時頃から午後5時頃まで直売所を運営するためには、野菜づくりにも年間を通じた工夫が必要になっている。消費者のニーズは野菜の新鮮度や味だけでなく、種類の多さにも及んでいるため、年間1作の野菜と年間2作、3作の野菜をうまく組みあわせて、栽培計画をたて、実施しているという。新しさや味がよいのは当然のことであるが、野菜の数が少ないという消費者にはアピールしないことになる。
・個々の農家は、消費者のニーズをじかに感じながら、それぞれの特徴を生かした野菜づくりを行っているので、個性が発揮され、それはたがいに競争しているように見えるかもしれない。どこの農家も同じ野菜しか出店していないのであれば、あまりおもしろくなく、魅力を感じさせない直売所になってしまうが、「レンバイ」にはそれがない。
3 直売所づくりのヒントを!
・農家やそのネットワークによる直売所は全国数多くある。「レンバイ」の事例は、直売所づくりのヒントを提供してくれるかもしれない。もっとも、それぞれの直売所は立地している地域の特性を十分考慮して行わなければならない。なお、「レンバイ」は知る人は知るところであり、鎌倉駅東口から数分のところにある。
(2019.7.4稿)
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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  • 開催日2022年11月5日
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