サロン情報詳細


【誌上テーマ別サロン】第114回 <基礎講座>   農家が行う6次産業化 ―「中小企業経営学入門」(114)―
【誌上テーマ別サロン】第114回
<基礎講座>
  農家が行う6次産業化
―「中小企業経営学入門」(114)―
1 “つくる”だけの農業経営からの脱却
・農業経営はわが国では小規模なうえ、後継者難に見舞われている。存続が困難な農家も多く、これにかわって農業生産法人が台頭している。国民の食を支える農業は必要であるだけでなく、成長性も十分に期待できるであろう。農業については、悲観的な見方も多いが、決してそう見るべきだはない。
・もっとも、農業経営は農作物をつくるだけに限定する必要はない。つくることは前提であり、生産つまり、つくることに全力と工夫をつくすことは大切である。しかし、つくったあとのプロセツについても考えて、農業経営をみていくことが必要である。
2 加工と販売を加味した6次産業化
・たとえば、人口の多い都市近郊の地域であれば、生産したナマの野菜類を直販することができるが、これ以外にも加工を行って、商品として販売することもできる。このような加工食品づくりは、農村部の女性たちによって以前から行われ、野菜類だけでなく、山間部で採集した山菜・キノコ類の加工業が展開され、実績をあげてきたことが知られている。
・神奈川県三浦半島にある高梨農園では、地域の名産である「三浦大根」を使った「大根のアメ」を商品化し、直売店で販売している。観光客の多いこの地では、手軽さとめずらしさがうけて、結構販売されている。
・また、三浦大根などのドレッシングが開発され、販売されている。農村部の女性たちの加工食品は味はよくても、パッケージや包装が地味で、目立たないものが多いのに対して、ここでは工夫が払われている。
・さらに、捨てられそうな規格外の野菜の加工も試みられている。それは漁業において収穫されても消費されてこなかった魚貝類を利用するようになったのと同じである。調理法を工夫したり、加工食品にすることで、これまで捨てられてきたものが、ここでも貴重な資源として登場している。つまり、これまで「常識」と思われてきたことを疑ってみて、なにか新しいことができるかを試みるマインドが見られている。
・高梨農園では、このようにして生産だけでなく、加工と販売をも加えて事業を展開している。これは、無理のない、いわゆる「6次産業化」の事例である。6次産業化では、他業種の企業とタイアップして行われることも多いが、ここでは、事業の多様化・拡大を自社の人的資源とくに女性の活用で可能にしている。
3 農業の永続性
・食がなければ人間は生きていけない。ということは、農業は、永続的な産業であり、ビジネスなのである。大変さはあるが、発展性はあり、チャンスは無尽蔵にあるといってよい。大変と思わずに挑戦してみることが大切である。
(2019.6.21稿)
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
Information
  • 開催日2022年9月5日
  • 場所
  • 時間
  • 費用