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【誌上テーマ別サロン】第112回 <基礎講座>   「ユーザー密着経営」こそスモール・ビジネスの生きる道 ―「中小企業経営学入門」(112)―
【誌上テーマ別サロン】第112回
<基礎講座>
  「ユーザー密着経営」こそスモール・ビジネスの生きる道
―「中小企業経営学入門」(112)―
1 ユーザー密着のガソリンスタンド
・ガソリンスタンド(GS)では、設備だけ用意して、人件費を必要としないセルフスタンドが増えている。これに対して、ユーザーに密着したサービスを提供することで、存続をはかろうとするGSも健在である。横浜市戸塚にある(株)三浦商会を事例にして、これを明らかにしよう。
2 “車のプロ集団”
・三浦商会は、スタッフは10名以下の少数であるが、全員が整備士の資格をもっている“車のプロ集団”である。かれらは、本来業務の給油だけでなく、洗車や車検をも含む車の総合的なケアに従事している。
・これにより、ユーザーが日々のカーライフを快適にすごせるようにしている。車のことならば、なんでも知っている車ずきのスタッフが配置されていることは、同社の強みである。
・東日本大震災(2011年)のときには、周辺の地域住民が同社のGSに避難し、地域住民の手助けになった。これを契機にして、スタッフ全員は「救命講習会」を受講し、予期できない事故とか災害から地域住民を守ろうとしてきた。
・現在では、AEDを設置しているところは多くなり、ごく一般的になったが、救命措置をしっかりできるところは多くないかもしれない。同社には、「GSは地域住民を見守る責任ある」との思いが浸透している。このサービスを意識することで、同社は「ユーザー密着」から「地域密着」に進化している。
3 「ヒトにやさしい企業」をめざして
・同社は2017年からGS内にストレッチの専門店「Free Rom(フリーロム)」を開店している。カー用品を販売した店舗をストレッチルームに変えて、給油や洗車の間、運転でつかれた身体をドライバーたちがケアしてほしいという思いから、ストレッチ店をスタートさせている。
・現在の3代目社長が、仕事中にケイツイを傷めて苦労し、ストレッチによって回復したことから、このビジネスを思いたっている。つまり、キッカケは、自分の健康維持からスタートしている。
・当初は、ヒザや腰に痛みを感じていた人びとの利用が多かったが、徐々に地域の高齢者にも利用が拡大している。1日に15分でも体を動かすことで、痛みが緩和できるということで、地域住民に利用されるようになっている。ここでも、地域密着に変わっている。
・今後は、少しづつ全国展開を考えているという。大分県の津久見市にストレッチの2号店が2018年にオープンしている。発展が期待される。
(2019.5.16稿)
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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  • 開催日2022年7月5日
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