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【誌上テーマ別サロン】第111回 <基礎講座>   「人在」企業というコンセプト ―「中小企業経営学入門」(111)―
【誌上テーマ別サロン】第111回
<基礎講座>
  「人在」企業というコンセプト
―「中小企業経営学入門」(111)―
1 吉田正博『企業永続の法則』に学ぶ
2019年に幻冬舎から出版された本書は、永続企業の条件やあり方を検討している。横浜市の経済行政・産業政策を長いこと経験してきた吉田の卓見には、教えられることが多い。「企業はヒトなり」というが、大企業では「人材」が、そして中小企業は「人財」さらに彼が主張する地域に密着している永続企業の場合に、ヒトといっても、「人在」があてはまるという。
使い切るとか、使い捨てるだけの単なる労働力であり、コストとしてのみヒトを見るのが人材であるに対して、人財は適切な投資を行うことで、付加価値や収益の向上に貢献するものと見ている。財は“宝”であるというのは、その意味でよく使われてきた。
2 「人在」企業というコンセプト
 吉田のいう「人在企業」とは、ヒトという存在に価値を見いだす企業のことであり、人のもつ存在感が重視される。人という存在そのものの大切さを認識することからスタートし、その人間の成長をはかることをこの経営は目指している。そして、地域で活動している中小企業のなかで、企業をとりまく各種のステイクホルダーに感謝し、ともに喜びを分かちあえる企業のことでもある。
 ヒトの成長を促進することは、ヒトは“宝”であることを示しており、人財企業と共通している。しかし、それだけでなく、地域密着の経営をとっており、地域との共生をはかっている。そこで、地域の各種のステイクホルダーに感謝し、喜びを共有しているのである。これが永続の条件である。
 このような人在企業こそが、「永続企業」になれる。永続企業は全国的なレベルでの大企業ではないが、活動を展開している地域ではステイクホルダーから長く愛顧される企業なのである。
3 ほかに“ジンザイ”はあるのか
吉田によって「人在」をはじめて知った。これまでは、すでに述べたように人材と人財のふたつであった。
これ以外に、ジンザイつまりヒトはあるのか。ひとつつくるとすれば「人才」があるかもしれない。才はヒトのもつ才能や能力のことである。そこで、「人才」企業はいろいろな才能や能力の持ち主の集まりであり、これを発揮させる企業のことである。したがって、「人才」企業はほぼ「人財」企業と同じものになろう。
いま考えられるもうひとつは、「人剤」企業である。剤とは組合せのことであるから、いろいろな能力とか、個性(長所だけでなく短所も)をもつ人びとがうまく組みあわされて働いている企業のことである。現代は、ヒトにはダイバーシテイ(多様性)がもとめられており、これが企業の発展や革新の源泉になっている。おそらく吉田のいう永続成長にも、この要素があるのだろう。
(2019.5.11稿)
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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Information
  • 開催日2022年6月5日
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