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【誌上テーマ別サロン】第110回 <基礎講座>   小手先の働き方改革と経営改革のはざまで ―「中小企業経営学入門」(110)―
【誌上テーマ別サロン】第110回
<基礎講座>
  小手先の働き方改革と経営改革のはざまで
―「中小企業経営学入門」(110)―
1 むずかしい経営改革の実行
・働き方改革は、経営改革であるにちがいなく、実際のところ経営改革をしなければならないことはわかっていても、実行はたやすくない。また、とりあえず働く人びとを思って、小手先の改革をあげることはできても、これも前にも述べたが実行はむずかしい。いずれもスモール・ビジネスにとってハードルが高い。
2 行政からの制約
・いずれもむずかしいといって、企業としてなにもしないで、ちゅうちょしたり、静観していると、働く人びとの健康や福祉の観点から、行政がルールをつくって企業に働き方改革を要請してくる。「努力義務」のルールであれば、無視することもできるかもしれないが、罰則や好評を伴うルールの場合には、企業にとっては社会的信用やイメージの低下をもたらすことになる。これは企業の経営を困難にしてしまう。したがって、最低限、ルール違反を犯さないようにしなければならない。
3 具体的な進め方
・それでは、働き方改革はどのように進めていけばよいのであろうか。ルールを守ることがマスト(must)であるが、選択肢は小手先の改革と経営改革の“はざま”にあるだろう。この際、経営改革を考え、それをふまえて、働き方を提案したいというのであれば、それはそれでよい。
・しかし、経営改革はかんたんにできないということであれば、自社にとって小手先の比較的実現可能な改革を考えて、実行することであろう。まったくなにをできないと考えてはならない。なにか働く人びとのために行えることがあると思って、進める必要がある。
・そして、自身にアイデアがでなければ、素直に働く人びとに話しかけて、かれらの意見やニーズを聞きとることが大切である。そこから、おそらく実現可能な働き方改革の提案がでてくるであろう。
・短期的には、このような進め方がもとめられるが、中期的には経営改革を行うことを十分に意識していなければならない。経営改革を考えることは、企業の将来展望にかかわることであり、企業の発展に直結している。それは働く人びとにとっては、将来どのような仕事にかかわって働いていくかということであり、まさに働き方改革そのものなのである。その意味では、小手先の改革を実施しながらも、経営者として企業展望を考えていることを働く人びとに示していくことが大切なのである。
(2019.3.25稿)
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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  • 開催日2022年5月5日
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