<基礎講座>
「オーナー型経営者」が支配するスモール・ビジネス
―「中小企業経営学入門」(11)
1 所有を根拠にした経営
・スモール・ビジネスを経営しているのはオーナー型の経営者といわれている人たちである。このタイプは企業のために出資しているオーナー(所有者)であり、自分が出資している株主であることが経営者の地位を占め、実際に経営できることの根拠になっている。いうまでもないが、私有財産制のもとでの企業は、オーナーの自由の意思によって経営できるわけである。
・経営学の教科書をみると、大企業を想定しているために、「所有と経営の分離」がいわれ、所有者(出資者)と経営者が別の主体になっていると述べているが、これは規模の大きな企業で、株式市場から資本を調達している会社に限定されている。これによると大企業中心の経営学がスモール・ビジネスの経営を説明できていないことがわかる。
2 「専門経営者」の台頭と支配
・大企業の場合、オーナーではない別の人びとが経営者になっているという。日本の場合、大企業の階層性のある組織を昇りつめた社内重役(内部昇進者)が多いが、近年では他企業の有能な経営者の引き抜き(外部導入者)もおこなわれており、この傾向は増加するものと思われる。
・このような経営者は「専門経営者(プロフェッショナル・マネジャー)」といわれ、いわゆる経営(マネジメント)のプロなのである。内部昇進者も外部導入者も基本的に有能な経営者であることが評価されてトップのポジションを得ているのである。
・かれらはオーナーの所有を根拠したものではなく、「プロとしての力量」を根拠にして経営を行っている。いわばオーナー(出資者)から委託をうけて経営している人びとであり、大企業の経営者はまさにこのような人びとである。
3 スモール・ビジネスでも増える「専門経営者」
・オーナー型経営者が支配しているスモール・ビジネスにおいても健全な経営を行い、持続的な発展を志向しているところでは、後継者の育成に注力しており、「専門経営者」づくりが推進されている。その意味では、小さな企業でも経営のプロが台頭している。かつては同業他社での修業が一般的であったが、現在ではビジネス・スクール(経営大学院)で学習している中小企業経営者も多い。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授 斎藤毅憲
[2015.8.18]
- 開催日2015年8月18日
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