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【誌上テーマ別サロン】第105回 <基礎講座>   事業承継をうまく行うためのステイクホルダー関係 ―「中小企業経営学入門」(105)―
【誌上テーマ別サロン】第105回
<基礎講座>
  事業承継をうまく行うためのステイクホルダー関係
―「中小企業経営学入門」(105)―
1 ステイクホルダー関係の理解と改善の必要性
・現在の経営者から次期の経営者つまり後継者に事業を承継する際に重要になるのが、主要なステイクホルダー(利害関係集団)との関係の現状を後継者に理解させ、場合によって改善しておくことである。つまり、ステイクホルダーとの関係を事前に知らせる必要がある。そして、これによって承継の覚悟をしてもらわなければならない。
2 主要なステイクホルダーとの関係
・まず、社内で働いている「スタッフ」が主要なステイクホルダーになる。とくに現在の社長の周辺にいる有力なスタッフとの関係に注意を払わなければならない。長年社長を支え、業務経験の豊富なスタッフである場合には、年齢の若い後継者が良好な人間関係をうまく築けるかどうか、心配になる。
・また、若いスタッフのなかに自分に協力してくれるような人材がいるかどうかも知る必要がある。いないのであれば、内部で育成したり、外部から調達することも考えなくてはならない。どうしても、経営には「協力者」や「支援者」になる。
・つぎに、「出資者」との関係である。スモール・ビジネスは、それほど巨額な資本で設立・運営されておらず、ファミリー(家族や同族)ビジネスであり、少数の出資者からなっている。外部の出資者は少ないが、しかしそれがだれでもあるのか、現経営者との関係はどのようになっているのかを理解する必要がある。また、ファミリー内部のメンバーと持株比率も当然のことながら知らなければならない。人間関係が濃密であるために、感情的なすれちがいが、思わぬ対立を生む可能性がある。
・第3の主要なステイクホルダーは、「取引業者」である。商品(原材料を含む)の主な仕入れ先や販売先がそのコアであるが、「金融機関」との関係も考慮する必要がある。金融機関にあまり頼りにすることなく経営しているのであれば、問題はないが、資金的に余裕がない場合には、金融機関もステイクホルダーになる。いずれにせよ、取引業者との関係は重要であり、今後問題になりそうなことがあるならば、それをしっかり理解しておくことが大切である。
・もうひとつは、地域密着のスモール・ビジネスにとっては地域住民の評価である。立地している地域住民との関係がうまくいっているならば、評価は高く、信用と愛顧を得ることができる。“悪いウワサ”は禁物であり、地域社会との関係を大切にしなければならない。
3 経営としてのステイクホルダー関係の維持
・このように考えてくると、後継者はステイクホルダーの関係に注目し、これを維持していくことに努めなければならない。そして、このような関係の維持も経営者の仕事なのである。
                 (2018.10.9稿)
                永続的成長企業ネットワーク 理事
                横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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  • 開催日2021年12月20日
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