【誌上テーマ別サロン】(第6回)
<基礎講座>
「ひとりの人間」の価値が高いスモール・ビジネス
―「中小企業経営学入門」(6)
1 人間の価値は等しく大切であるが、企業の現場では?
・人間はすべて等しく大切であり、それぞれの人間性を尊重しなければならない。これはまったくあたり前のことである。しかし、企業の現場で考えてみると、少しちがったことがいえるかもしれない。
・1万人の従業員の企業と10名が働く企業とを比較してみよう。1名の人間が退職すると、片方は1万分の1であり、他方は10分の1である。1名の退職者の意味は後者のスモール・ビジネスにとってきわめて大きいことは明らかである。ヒューマン・リソース(人的資源)が豊富な大企業では退職者の補充は比較的容易であり、退職者がでても組織は円滑に動いていくことであろう。
・これに対して、スモール・ビジネスの場合には1割の人間が減少することであり、退職者がでることは企業経営に大きなダメージを与えることになる。つまり、組織は円滑には動かない事態に直面する。そして、明らかに、「ひとりの人間」の価値が小さな企業ほど高いことがわかる。
2 「ひとりの人間」への大きな期待
・別の言葉でいうと、働くひとりひとりの人間への期待は、スモール・ビジネスのほうが大きいといってよい。10名で「みこし」を担ぐとすれば、ひとりひとりが力を発揮しなければならない。たとえば、30名ぐらいで担ぐならば、ひとりぐらい力を抜いて、ぶらさがっていてもいいと考える人間もいるかもしれないが、少人数であれば全力を尽くすことが必要となる。まさに、このことはスモール・ビジネスにもいえることであり、自分の力を発揮したい人間にはスモール・ビジネスは“いいところ”となるであろう。
3 報酬や働く環境の改善への配慮を!
・スモール・ビジネスは経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報など)に余裕がないので、報酬や働く環境が大企業に比べてよくないといわれている。しかし、以上のように考えてくると、ひとりの人間の価値が高く、その人間へのきたいも大きいので、報酬の支払いや働く環境に十分意をそそいでいくことが大切になる。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授 斎藤毅憲
[2015.4.19]
- 開催日2015年4月19日
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