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【訪問型サロン】(第6回) <Yokohama Excellent Company (YEC) 第6回> 『㈱キクシマの菊嶋秀生社長に聞く』[(その1)/3回連載]

【訪問型サロン】(第6回)
<Yokohama Excellent Company (YEC) 第6回>
『㈱キクシマの菊嶋秀生社長に聞く』[(その1)/3回連載]

1 日 時 2019年6月28日
2 場 所 ㈱キクシマ関内オフィス
3 聞き手 永続的成長企業ネットワーク代表理事 吉田正博
々        理  事 斎藤毅憲(文責)
々        フェロー 増田竜雄
4 内 容 以下の通り

・(株)キクシマの本社は、港南区の港南台にあるが、2012年に開設した関内オフィス(キクシマ関内ビル)を訪問した。北仲通にあり、横浜の雰囲気がある地域にオフィスがある。各種の表彰うけている同社であるが、たくさんの表彰状のかかっている応接室で話をうかがうことができた。吉田代表理事が「県知事さん以外に県内の10をこえる市長さんの名前の入ったこんなに大きな賞状は見たことがない」と述べられたが、まったくそのとおりであった。
・この関内オフィスについては、永続的成長企業ネットワークで、すでに2,3回利用させてもらっており、親しい気持ちで話をうかがうことができた。

[社歴と創業者] 1964(昭和39)年に創業し、翌65(昭和40)年に法人化している。創業者は現在の社長の父親である菊嶋巧さんであり、母親のまゆ美さんなどの協働で、同社はスタートしている。ベランダ、手すり、階段などの住宅関連の金物加工で、いわゆる受注生産であるが、東京オリンピック後の不況で苦しい経営を強いられている。
・しかし、自動車メーカーからの受注のほかに、設立当初からの顧客である工務店との関係を重視し、建築工法が木づくりから鉄骨づくりに転換していた時期であったので、鉄骨づくりの支援を工務店に行うことで、総合建設業になるベースを得ている。主要な事業(ドメイン)は、金物加工から重量鉄骨に移るとともに、1980年代前半には工務部を設置し、総合建設への道に進むことになる。
・創業者の信念は、「信用」を得ることであり、信用を得るための「努力」を大切にした経営を行い、1993(平成5)年には(株)菊嶋鉄工建設を現在の社名に変えている。この年には、本社ビルを建設しており、地道につくりあげてきた信用力の成果があらわれている。翌94年には「横浜市優秀工事施工業者表彰」をうけている。

[二代目社長の登場] 現社長は2代目であり、現在の年齢は社歴とほぼ同じであるという。大学(理工学部)卒業後、2年半ほど民間企業に勤務した後、同社に入社している。94年に「(株)キクシマ一級建築士事務所」を設立し、98(平成10)年には、社長に就任し、現在の資本金5,000万円に増資している。2代目として承継するまでの時期を含めると、創業者とほぼ同じ30年に近い経営者としてのキャリアをもつことになる。

・経営理念の特徴 社長になってから経営理念をつくっている。「真心と技術」がそれであり、「健全な精神という基礎のうえに、確かな技術を築いて社会に応える 人と街が輝く未来のために」とある。そして、行動指針は「私たちは、つねに自らの人間力を高め技術を磨き、人と社会が輝く未来に向けて行動いたします」としている。社長はいう。技術は大切であるが、それ以前に人間力(真心)が必要であり、これを重視している。
・人間力と技術がキクシマ経営を支えるものであるとしているが、これは創業者の重視した信用をまさにつくりあげるものとも考えられる。現代の企業は、技術偏重になりつつあるが、人間力(真心)が原点にあることを教えてくれる。そして、この理念は社内にかなり浸透しているように思えた。

[主要なドメイン] 創業期のメインのドメインであった鉄骨製作が依然として大きな比重を占めており、4分の1(25%)を維持しているという。同社は2015(平成27)年に長野県にある協立工業(株)の株式を取得し、同社にグループ化しているが、それはこのドメインを強化することをねらっている。
・残る75%は、注文住宅建築、幼稚園・保育園や公共施設の建設、集合住宅・商業施設の建築、リフォーム・増改築・リノベーション工事、耐震補強工事、マンションの大規模改修工事、土木工事、不動産業務などの、建築部門であり、広範な事業内容からなっている。
・大都市地域においては、建築関係のマーケットは、末端の川下のステイクホルダーを意識すると大きく、顧客も多様に存在していることを感じさせてくれた。したがって、同社にとって、そこでのビジネス・チャンスの発見は大切になっている。

[横浜の代表的CSR企業としての位置づけ] キクシマというと、どうしても横浜を代表するCSR企業であるというイメージが強いが、インタビューのなかでも、多様な地域貢献活動を行っていることを明らかにしてくれた。その活動ぶりは横浜型地域貢献企業のなかでは段ちがいの感じがする。横浜型地域貢献企業と認定されている建築業者はかなり多いが、同社の地域貢献はレベルが高いといえる。
・社長は横浜青年会議所(JC)でもリーダー的な存在であり、そこでCSRを学んでいるが、独自の歩みを行ってきたという。
・社長から多様な活動をみせられると、国連がつくったSDGsの基準のかなりの項目を意識しているように思われてくる。「よこはまグッドバランス賞」の受賞に示される従業員に配慮する企業だけでなく、“社会に開かれた企業”であることがわかる。
・建築業は特定顧客とのフェイス・ツウ・フェイスが大切かと思ってきたが、典型的には関内オフィスの開設は、それを打ちこわしていく試みと評価できる。異業種交流会(ウルル・ミーテイング)は「ヨコハマのまちづくり」をコンセプトにしたもので、ここから建築だけでなく、まちづくりのマグマをつくりだそうとしている。
・同社が中心になって工藤建設などと一緒に行ってきた「養蜂事業」のハチミツは、菓子メーカーに提供され、「よこはまおやつ」の材料として役立つだけでなく、売り上げは福祉施設に寄付されるだけでなく、幼稚園・保育園への「もみの木」植樹プロジェクトの実現にもつながっている。ここでも、同社は他業種や他団体との関係がつくられ、地域づくりや環境保全に貢献している。
・2004(平成16)年、「赤い屋根保育園」(横浜市)を契機にして、同社は幼稚園・保育園建設の新たなパイオニアになるが、これは子育てや教育支援への関心を当然のことながらつくりだしている。子どもへの職業体験、大学生へのインターンシップなどを行うとともに、「木とふれあう遊具コンテスト」などを生みだしている。これを通じて木にふえあうことで、子どもたちにものづくりの楽しさと環境の大切さを教えようとしている。
[以上(その1)/3回連載]

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Information
  • 開催日2019年7月12日
  • 場所
  • 時間
  • 費用