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【訪問型サロン】(第5回) <Yokohama Excellent Company (YEC) 第5回> 『㈱大川印刷の大川哲郎社長に聞く』(その1)/3回連載

【訪問型サロン】(第5回)
<Yokohama Excellent Company (YEC) 第5回>
『㈱大川印刷の大川哲郎社長に聞く』(その1)/3回連載

1 日 時 2018年7月5日
2 場 所 ㈱大川印刷横浜営業所HEAD OFFICE FACTORY
3 聞き手 永続的成長企業ネットワーク代表理事 吉田正博
々          理事 斎藤毅憲(文責)
4 内 容 以下の通り

・1881(明治14)年創業の大川印刷は、わが国の印刷業界のパイオニアであり、間もなく140年をむかえる長寿企業である。本社と工場は戸塚区上矢部町にあるが、今回の訪問型サロンは、横浜駅東口にある横浜営業所(ヨコハマジャスト2号館3F)で行われた。東口から徒歩3分の近場である。崎陽軒本店にも近く、にぎやかなゾーンであるが、オフィスはきわめて静かであった。
・6代目の社長は、創業130年の折に、祖父が残した数冊のノートを出版している。この著作をみると、大川家の人びと、創業期の様子、仏教に帰依し、日本画・俳句などを楽しんだ文化人の祖父の姿がせきららに描写されており、興味深い。そして、本書は“かつての横浜”を知るうえでも貴重な資料になるであろう(大川重吉著『昔がたり』、2012年、大川印刷を参照)。

・CSRの代表的な企業の経営者として 大川社長は永続的成長企業ネットワークのメンバーとしても多大の貢献を行い、メンバー企業どうしの啓発活動に寄与してきた実績をもっているが、なによりも評価したいのはCSRの実践活動を展開しつづけてきたことである。横浜型地域貢献企業認定制度が発足して、10年が経ったが、頭初から認定されるとともに、制度発足10年を機に設けられた「プレミアム表彰」の最初の対象企業にもなった。
・過去、10年間で約450社を越える企業が認定されてきた。認定基準は、①企業としての経済的なパフォーマンス(業績)をあげること、②地域貢献をしっかり行っていること、③地域貢献を単なる思いつきで行っているのではなく、「プラン・ドゥー・シー」というマネジメント・システムのなかで実施していること、である。
・そして、今回設けられたプレミアム表彰は、この基準にさらに、他の認定企業の模範となるような地域貢献のとり組みを行っていることがくわわっている。他の模範となるということは、横浜の代表として、どこに出しても誇りうるような活動を実践していることであった。
・はじめてのプレミアム表彰は、大川印刷と都筑区のスリーハイの2社であったが、そのCSRの実績は抜群の内容のものであり、まさに横浜のプライドといってよいものであった。

・グリーン・プリンティング・カンパニー  大川社長は企業の社会性も意識した「ソーシャル・プリンティング」という言葉も使っているが、グリーン・プリンティング(環境を大切にした印刷等)にも少しシフトしているようである。“It’s all about Green Printing”(環境印刷で刷ろうぜ)が現在のキャッチフレーズである。
・具体的には、環境や人体に有害なVOC(揮発性有機化合物)を含まないインキの導入を2005年からスタートさせ、2018年に全体使用量の80%達成を目ざしている。また、違法に代採されていない森林から産出された木材チップを原料とするFSC森林認証紙の使用をほぼ同じ時期から行い、2018年には購入比率を50%にしたいという。
・さらに、2007年から電気使用により発生するCO2の年間排出量を計測して、削減する努力を継続させている。これらの活動は、環境重視のCSR企業としては、当然の成り行きであろう。
・これらの活動によって、大川印刷は、環境への負荷を軽減させ、製造過程とアウトプットされる製品の安全性や安心を確保しようとしている。それだけでなく、さらに顧客満足(CS)を重視し、利用者の期待を上まわることを行うことが大切であるとし、顧客アンケートやクレーム(苦情)対応によって、品質の向上を実現しているという。また、顧客満足の前に、いうまでもないが、従業員満足(ES)の向上が前提にあるとされている。

・社会起業家としての大川社長 社長と教育機関、公共的機関、NPOなどとの関係は深く、連携(パートナーシップ)は驚くほど広範である。大川社長は社会にもとめられる企業とは「世のなかや自分の課題を解決してくれる企業」であるという。社会にあるさまざまな問題を解決するのが、社長の考える企業像(目標とされる企業イメージ)であるから、連携は必然的に必要なのであろう。
・別のいい方をすると、いろいろなステイクホルダー(利害関係集団)と関係をもつことで、社会問題を発見し、解決しているのだと感じられた。印刷業を本業とはしているが、本質的に大川社長は社会起業家(ソーシャル・アントレプレナー)なのだと感じられた。その点ですでに「訪問型サロン」の対象となった協進印刷の江森社長と同じような印象をもった。

・CSRの展開による企業イノベーション  要するに、大川社長の経営とは、CSRの考えをベースにして、いろいろなステイクホルダーと関係をもつことで、連携による創造性発揮という、いわゆる「オープン・イノベーション」を実行しているのだと感じられた。印刷業はきびしい環境のなかで経営をつづけているが、CSRを実践することで、自社の経営をイノベーションしているのが大川印刷の現在の姿なのである。そして、このようなイノベーションによって環境を積極的に変えていく「変化創造型」の企業になろうとしている。
[以上 (その1)/3回連載]
[2018.8.20]

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Information
  • 開催日2018年7月5日
  • 場所
  • 時間
  • 費用