サロン情報詳細


【誌上テーマ別サロン】第125回 <基礎講座>   後継者対象の拡大―甥や姪を活用しよう! ―「中小企業経営学入門」(125)―
【誌上テーマ別サロン】第125回
<基礎講座>
  後継者対象の拡大―甥や姪を活用しよう!
―「中小企業経営学入門」(125)―
1 後継者問題への新しいアプローチ
・スモール・ビジネスの経営者づくりについて、宮田則夫著『後継者がいない! バカ息子より猫に会社を継がせたいと考えている経営者へ』(文芸社、2015年)は、妻の甥に事業承継させたことから、甥や姪にまでも後継者の対象にすれば、深刻な後継者問題は解決できるようになると主張している。
・経営者は自分の子どもだけでなく、自分と伴侶の甥や姪をも後継者になりうるとすれば、後継者となりうる人間は拡大するという。確かに、そのとおりであろう。
2 甥や姪を後継者とする場合のメリットとは?
・宮田は、いろいろなメリットをあげているが、なによりも大きいのは、選抜の対象者が多くなることで、複数の人間から適材を選べるチャンスが増えることである。また、対象者との年齢差も事業承継による世代交代にほぼマッチしていることである。年齢差があまりないと、後継しても活躍できる年数が少なくなり、また短期間のうちに、つぎの後継者を考えなくてはならない。甥や姪であれば20から30年ぐらいの年齢差があるので、適材を選べば、相当の年数を活躍してもらうことができる。
・また、子どものときから、候補者を見てきているので、本人の行動や考え方を知っているので、経営者としては安心感をもつことができる。さらに、選ばれた本人については、親族だけでなく、取引業者などのステイクホルダー(利害関係集団)からの承認も得やすいであろう。選ばれる本人も親族であるということから、候補者になっても抵抗感が少ないと考えられる。
3 心配になることはないのか
・甥や姪をも後継者にするならば、候補者が増えることが確かに予想される。しかし、子どもの数が減少するだけでなく、兄弟姉妹などの人間関係もかつてないほど希薄になりつつあるという現実もある。しかも、同じ地域に居住することも少なくなっている。他人の意思を尊重する進学や職業などによって、居住する地域は、特定の限定されたものではなく、広範囲にわたるようになっている。
・居住する地域が広域になっても、親族としての人間関係や交流が密であれば、甥や姪が候補者になることはできるが、そうでなければそれほど楽観的に考えることはできない。それと、自分だけでなく、伴侶の甥や姪は現在の少子化や非婚化のなかで、本当にどのくらいいるのであろうか。実際は思ったほど候補者は多くないかもしれない。
・宮田は、甥がいなければ、姪でもいいという。現代の女性は結構、経営者として活躍できるとしているが、この主張には賛同できる。しかし、後継者としてなってもらうためには、経営者は経営がおもしろい仕事であることを、身をもって示さなければならない。苦しい姿だけを見せているようでは、姪はもとより甥も後継者になることをさけるであろう。
(2020.2.10稿)
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
Information
  • 開催日2023年8月5日
  • 場所
  • 時間
  • 費用