<見聞記>
『台湾の大学におけるビジネスプラン・コンテスト(商業模擬競賽大賞)をめぐって』
・台湾の台中市にある静宜大学で私の教えた林津瑩先生が教師をしている。横浜市立大学大学院経営学研究科で私のゼミナールで、いまから4分の1世紀前に学んでいた林先生が「創投」(Taiwan Venture Capital & Business Model Contest)を同大学で2015年1月17日に行っている。永続的成長企業ネットワークにも後援団体になってほしいということで、若干の賞金と当日配布の立派な冊子へのメッセージをさしあげた。私のメッセージは「起業の成功のための準備を!(創業成功不可或缺的準備)」で、ビジネスプランをしっかり作成することが大切であるとともに、日本の大学でも起業教育が盛んに行われるようになっていることを書いた。
・中国語の冊子なので、私には理解することがむずかしいが、台北大学教授(商学院長歴任など)で、International Business Academic Consortium 理事長の方文昌先生は、当日の審査員の1人であるとともに、このコンテストの意義を中国語と英語で明らかにしている。先生のメッセージのタイトルは“Strawberry Generation”(イチゴ世代)と“Mutant Ninja Turles”(忍者亀)である。イチゴ世代とは若者への批判的な言葉で、安易に生活しようとし、困難な問題に対決するとか、克服しようとする能力に欠ける人間であるという。方先生によると、林先生はビジネスプランづくりというハードな学習を通じてイチゴ世代の学生を忍者亀に変えたとしている。
・“mutant”とは突然変異とか、別種の意味であるが、イチゴ世代は忍者亀に変わったとし、この人たちは困難な環境のもとでも生きのびることができ、少なくとも台湾がおかれている状況が非常にきびしいことを知っていると述べている。確かに、このコンテストには“Vision,Courage,Brave,Motivate”の4つの言葉がモットーとしてかかげられており、起業家精神の高揚が示されている。
・コンテストには、5名から10名までの5グループが参加し、ペット関係、イモを原料にした製品づくり、お見合いの場づくり、いやし系の製品、ファッション系などの会社(股份有限公司)プランが発表されている。プランづくりにあたっては経営学の理論や主要な分野の知識を使用しており、わが国の大学生と同じレベルのプレゼン資料になっている。パワポは図表が多く、文字は少ないが、会社のプロフィールを1頁分の文章でまとめて、その点の不足分を補っている。プランのテーマをみるかぎり、台湾も日本と同じような状況にあるのかと思った。
横浜市立大学名誉教授 ・ 放送大学客員教授
永続的成長企業ネットワーク理事 斎藤毅憲
[2015.3.29]