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<マイ・オピニオン:[帰省日記]> 『郷里の商店街に思う(14)』

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『郷里の商店街に思う(14)』

・4月18日に帰省した。南東北の桜は、関東と同じようにかなり早かったようであるが、北東北は咲きはじめであり、梅と同時に咲いている。自宅の水仙は満開であるが、昨秋に植えたチューリップは、一部しか開いていない。家の内と庭を掃除した後、商店街を見にいく。水曜日なので、メイン・ストリートの主要な店舗は休みが多く、閑散としている。目的はメイン・ストリートと市役所の間にある坂の途中の店舗である。
・かつてメイン・ストリートにあった呉服店の別邸(べってい)は改装されて、「茶寮かだん」になっていたことを知っていたからである。この別邸の花壇は、宮沢賢治がつくったことで、多くの人びとを集めはじめており、別邸自体も必ずしも大きくはないものの、和と洋の調和した建物になっている。私が出向いたときには、利用者はいなかったので、店主は建物や花壇について、ていねいに説明してくれた。
・翌日、お箸でソフトクリームを食べさせる再生した百貨店の7階食堂で、ソフトドリンクを飲みながらメイン・ストリート周辺をながめてみた。すいていた時間帯なので、窓側に座ることができた。「茶寮かだん」の前が更地になっている。それだけでなく、閉店してからかなり時間がたっている市内一番の本屋さんの建物、「茶寮かだん」の前につづくメイン・ストリートの裏どおりにあったボーリング場も更地になっていた。
・この更地には、公営災害住宅ができるという。7階の食堂の前に高齢者施設がすでに稼働しており、かつての面影を失ったメイン・ストリートは店舗ではなく、住宅ゾーンに変わろうとしている。メイン・ストリート周辺の居住者人口が極端に減って久しい。したがって、食料品の店舗はほとんどなくなり、コンビニも閉店しまっている。その意味では住宅ができ、居住者がふえることになれば、食料品の店舗も戻ってこよう。
・もともと地元では“おおだな”であったメイン・ストリートの店舗は、小売業者であったが、郊外部や農村部の地域の小売業者にとっては卸売業者としての役割を果たしてきたために、必ずしも「消費者志向」とはいえなかったように思われる。くわえて、流通チャネルや物流システムの変化のために、そのポジションを低下させてきた。また、大型のショッピング・センターが郊外部に建設されることで、メイン・ストリートの衰退は決定的になってしまったわけである。
・よく見ると、このメイン・ストリートには消費者を呼びこむような店舗がきわめて少なくなっている。金融機関(2店舗)、タクシー業者、駐車場スペース、宮沢賢治関係の施設、お祭用のスペースなどもあって、店舗は少なく、品揃えも多くない。これでは郊外部のショッピング・センターにはどうしても対抗できそうもない。もはやメイン・ストリートであったことの証明は、9月のお祭りのときだけになってしまったのであろう。
・このようなかで、役所(行政)は「コンパクト・シティ」を目標にして、公営災害住宅などをつくり、メイン・ストリートのリストラ(再構築)を試みようとしているのかと思った。そして、付近にあった県立の総合病院が移転してしまったこともダメージを与えていたが、新たに総合病院が跡地に建設されるので、メイン・ストリートの再生の芽が少しでてきたのかもしれない。
・さて、7階の食堂をでて、定番のコースであるワンコソバ屋(嘉司屋)で夕食をとった。外来のワンコソバ客が多くなるゴールデン・ウィーク対策に人手をさがしているが、ここでも人手不足で人が集まらないという。高校生も対象にしたらと述べたが、これまで行った経験がないという。
・同店のソバと地元の食品メーカーが作った商品とのコラボ・メニューを食べてみた。いいコラボで、うまいと思った。ソバ焼酎を若竹のサシミで飲んだあとの、少しからみのあるつけものを具としたソバには、満足した。座敷では、新任や離任のパーテイをワンコソバで楽しく行っていた。競争的な要素は、この店のワンコソバではあまりないので、私にはあっている。
・今回は、5日間の帰省であった。朝は、国道4号線沿いにある近くのコンビニに行ったが、自家用車客が入れかわり、入ってくる。コンビニの利用は確かに高いことを実感させる。また、春になって、花壇などの手入れをしようとする人がホームセンターに集まってくる。かれらは、花、野菜、庭木、肥料などを買い求めている。いうまでもないが、長い冬から解放された人びとの喜びがわかる。
・帰省中はきわめて暖かい日がつづいたので、桜はたちまちのうちに満開になってしまった。

               永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授・元関東学院大学教授
斎藤毅憲
[2018.5.1記]