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<マイ・オピニオン:[帰省日記]>『郷里の商店街に思う(10)』

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『郷里の商店街に思う(10)』

・1か月遅れの旧盆で帰省した。ほとんど「まち歩き」はできず、食べものと新聞を買うために、家の近くにあるショッピング・モールとコンビニに出入りすることが多かった。
・実家を西方向に200メートルぐらい歩くと、国道4号線にぶつかり、さらに南方50メートルぐらいのところにコンビニ、さらに100メートル先のところにショッピング・モールがある。おそらく200台の車をとめることができる駐車場がモールにはあり、比較的大規模な食料品・雑貨の店舗と同じ売り場面積をもつと思われるホームセンターが中核施設になっている。これに工具店、100円ショップ、美容室、さらに食堂、遊技施設などが別棟で併設されている。ドラッグストア、書籍店舗、衣料品やリサイクル関係が併設された時期もあったが、入れかえがあり、現在はいま述べたようになっている。
・ロードサイド店であるコンビニにも、20~30台の駐車場がある。もともとはガソリンスタンド店があったので、ゆったりとした感じである。
・この周辺は、町はずれのところであり、稲作を行っていた地域であるが、それを転換して、店舗に変わってきたのである。それだけでなく、ロードサイド店には、自動車の販売会社や修理工場、ギフトセンターのほか、食品工場などが立地している。
・買物客は、自転車や徒歩の人もいるが、多くは車でやってくる。ゴミ捨てなど比較的近いところに行くにも自家用車の利用が多い。確かに歩いている人の姿は少ない。歩いているのは、散歩や健康のための早歩き人びとなのである。そして、まとめ買いをするために、どうしても車を使うことになっているように思われる。
・ショッピング・モールだけでなく、ロードサイド店のコンビニも事情は同じであり、車の利用者が結構多い。私のように、ぶらぶら歩いてくる人間はほとんど見うけられないのである。
・思うに、地方都市の商店街はかつてのものとは大きく変わってしまった。メインストリートといわれる“線(ライン)”のまちは衰退し、ショッピング・モールの“ゾーン”や“点”とロードサイド店の“線”に転換したのである。そして、この転換にはモータリゼーションが大きくかかわっている。地方都市の郊外部は空間的な余裕もあって、かなりの車を収容できる駐車場をつくることができるのであり、車の所有者にとってはショッピング・モールの店舗やロードサイド店は利用しやすいものになっている。
・確かにかつてのメインストリートに行っても生鮮3品の店舗はほとんどなくなり、あっても品揃えは少ないので、なかなか購買意欲がわき起こる店舗は少ないのである。したがって、郊外部の要所にあるショッピング・モールにどうしても買物客が集まってしまうのも仕方がない。今後は、増加してきたショッピング・モールどおしの競争が激しいものとなろう。それと車を使えない高齢者が増えてくることが予想され、買物難民時代が本格的に到来することになろう。

              永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
(2016.8.20執筆)
[2016.9.15掲載]