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<マイ・オピニオン:[帰省日記]>『郷里の商店街に思う(9)』

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『郷里の商店街に思う(9)』

・7月上旬に帰省した。東京と周辺に住んでいる高校時代の同級生と郷里の神楽を見るのが目的である。母校の見学のあと、山の名前がついた神楽の開催地にマイクロバスで向かった。同じ市内といっても、平成の大合併で統合された地域で、山間地である。岩手山は岩手県のシンボルのようにいわれるが、私の田舎の家あたりからは岩手山の頂上が少し見えるだけで、エーデルワイズに代表される高山植物で有名な山の方がこの地域の人びとにとっては信仰の対象であり、シンボルでもある。
・山のふもとにある神社や資料館で由緒を知る。資料館では神楽のビデオもあり、翌日への期待が高まった。この山間部は、神楽の里のほかに、ワインの里であり、レストランやホテルもワインの里であることを思わせる造りになっている。夜は地元の同級生も参加してくれて、約20名で久しぶりのパーティを行った。
・翌日は神楽の日であり、見学のために、会場まで約20分ぐらい歩いた。まちの印象は人口減に悩んでいるとはいえ、結構がんばっていると感じられた。家なみや商店街はどちらかというと古くなっているが、合併前からのまちの中心には、そこそこの厚味があると思われた。
・神楽を行う会場と周辺はよく整備されており、会場には150名ぐらいは入るのであろうか。7,8割の席は埋まっていた。午前1時間、昼休みをはさんで、午後2時間、合計3時間で神楽をみせてもらった。7~8本の演目であったが、心身ともに払い清められて、すがすがしかった。それと、子ども時代にお祭りなどで神楽が自分の身体に入っていたことを実感することができた。そして、できればまたみたいし、いろいろな人びとに体験してもらいたいとも思った。
・山間部にあるこの地域は市内のなかでは人口減が激しいといわれている。かつて金山があった地域であり、盛岡から遠野に行く交通の中心であったので、豊かなところであり、ヒナ祭りが古くから行われ、現在ではその時期には観光客を集めている。
・思えば、神楽があり、冬期を除けば月1回(第2日曜)神楽の日がある。そして、ワインの知名度があがっている。当然のことながらブドウづくりも行われている。さらに、登山のできる100名山もある。要するに、この地域には、全国的にもアピールできる地域資源に恵まれているといってよい。
・現状では集客のためのマーケティング力が弱く、交通のアクセス手段が整備されていないが、やりようによってはきわめて可能性のある地域である。地域の人口減は進み、それにあわせて商店街も衰退するかもしれない。しかし、外からの集客ができれば、消滅するまちや商店街にはならないだろうと思った。
・神楽の開催地に行く前日、いつものようにわんこそばのお店で夕食をとった。メイン・ストリートにあったソフトクリームをお箸で食べさせる昭和風の食堂のある建物については、地元の家守舎の代表が必要資金の半分を供出し、残りの半分を寄付で、なんとかしようとしていると聞いた。クラウド・ファンディングなどで、どのくらいの金額が集まるのであろうかとも思った。翌日の同級生とのパーティで寄付をした同級生のいることを知った。少しは希望をもとう!
・夕食後、閉店した建物(店舗)を見に行った。閉店の理由を書いた紙が掲出されていたが、それは、建物の老朽化のせいであるという。

              永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
[2016.8.15]