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<マイ・オピニオン:[商店街よ!元気になーれ(14)]> 来街者調査が示すもの

<マイ・オピニオン:[商店街よ!元気になーれ(14)]>
来街者調査が示すもの

1 来街者が減少した商店街の増加
・中小企業庁が(株)アストジェイに委託した全国の商店街調査(『商店街実態調査報告書(概要版)』2016年3月)によると、平成27年度に来街者が「減少した」商店街は約57%でサンプル数は異なるが、平成21年度の約77%、平成24年度の約73%に比較して、17~20%減少している。これに対して「変わらない」は約24%で、約16%、17%から増加している。そして、「増えた」は約11%で、約6%、7%から同じように増えている。
・これによると、商店街衰退の重要な兆候となる来街者の減少については、若干押さえられてきた感じがする。それでは、増加した要因や減少要因とはどのようなものなのであろうか。

2 来街者の増加要因と減少要因
・増加した要因には、主に3つのものがある。そのひとつは「集客用のイベントの実施」である。ふたつ目は、「商店街自体の情報発信力」である。そして、第3は「魅力ある店舗の増加」である。
・これによると、各種のイベント開催が集客に貢献している。また、パブリシティ(広報活動)を熱心に行うことが大切である。しかし、それだけでなく、個店の魅力度アップが意味がある。来街者を増やすためには、イベント開発やパブリシティが必要になるが、来街者のなかから来店者をつくらなければならない。それには商店街に魅力のある店舗を増やしていくことである。なお、「地域の人口増加」や「交通の利便性向上」を増加要因と考える商店街は減少している。
・これに対して、来街者の減少については、「魅力ある店舗の減少」がもっとも多くなっている。それとならんで、減少要因として重要なものに「業種・業態の不足」があげられている。さらに、「地域の人口減少」の比重がアップしている。むしろ、「近郊の大型店の進出」のウエイトは低下している。そして、「駐輪場・駐車場の不足」を減少要因とするのは、これまでどおり多くない。

3 調査結果から見えてくるもの
・この調査から見えてくるものは、まず商店街自体のもつ「商店街力」である。集客用のイベントを実施することができる力をもっていることが大切であり、これに関連して、商店街に情報発信力があるかというポイントが重要になる。
・第2に、魅力ある店舗の存在である。これが増加していると、集客は増え、来店者も増えている。しかし、減少しているとすれば、集客は減少しているということである。個店の魅力づくりという顧客にどのように向きあうかという姿勢が大切なことがわかる。それに関連して、いろいろな業種・業態がなくなると、商店街の魅力が減少することが示されている。要するに、業種・業態の多様性が商店街には大切なのである。
・第3に、環境要因としては、地域の人口減は集客に結びついているが、これに対して交通の利便性、大型天の進出、パーキングの意味はそれほど集客に関連していないことがわかる。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲