<マイ・オピニオン:[商店街よ!元気になーれ(12)]>
利用者に向きあう個店経営者姿勢が原点
1 商店街の活性化に必要な経営者の姿勢
・商店街や個店の活性化にとって、もっとも大切なものはなにか。いろいろなことがいわれてきたが、結論的にいうと、それは利用者や消費者に向きあう個店経営者(店主)の姿勢や態度である。
・商店街の環境整備も大切である。そして、店舗のリニューアルも必要である。また、ソフト面での客導線の工夫や商品の陳列、ポイント制や売出しキャンペーンなども必要であるし、イベントの開催も来街者数を左右する。その意味では商店街はいろいろなことを行い、来街者を増やし、活性化の努力を行ってきたといえる。
・いずれも大切である。しかしながら、それ以前にもっと大切なのは、個々の店主が利用者や消費者に対して、どのくらい向きあう姿勢をもっているか、である。
2 利用者と向きあった旭山動物園
・おそらく個店の経営者の多くは利用者に向きあっていると反論するであろう。しかし、本当に向きあっているならば、店舗には来店者がおり、それなりの経営成果(売上高など)を得ていることであろう。
・商品は陳列しているが、店主が店舗の奥にいる場合がよく見うけられる。店頭に立ち、ときには来街する人びとに声をかける姿は八百屋さんを除けば、ほとんど見ることがないといったら、いいすぎであろうか。要するに、利用者と向きあい、来店者を増やそうという風景はきわめて少ないように思われる。
・旭山動物園の再生がどのようにして可能になったのかという議論のなかで、きわめて説得力のある主張に、動物と飼育係が見学者に向きあったというのがある。筆者も、この主張に従いたい。
・かつての動物園では飼育係は動物のほうだけ見るだけであり、また動物も見学者に背なかを見せているといった状態であった。それは見学者に向きあうものではなく、見学者には決しておもしろいものでなかった。このようななかで、旭山動物園は動物と飼育係が見学者のほうに顔を向け、飼育係は当該の動物の話を見学者に語りかけることにした。そして、これにより、再生に成功する。
・この再生にみられるのは、利用者と向きあう姿勢をもち、それを実践したことである。そして、商店街活性化の原点も、この利用者に向きあう姿勢にある。したがって、なによりもこの姿勢をもつことから出発しなければならない。
3 利用者重視の再確認
・マーケティングの分野では、利用者や消費者重視が当然のこととして主張されてきた。
とくに小売業の現場では利用者や消費者サイドに立つことが重視されてきたが、商店街の個店にはそれがなかったのかもしれない。もう一度、この立場にたって利用者に強力にアプローチする必要がある。それができれば個店だけでなく商店街も活性化する。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授 斎藤毅憲
[2016.11.15]