<トピックス>神奈川県内企業の女性社長比率調査(2018 年)帝国データバンク調査から
県内企業の女性社長比率は7.38%
~ 30年間で3.26ポイント増加 業種別では「保育所」がトップ ~
はじめに
・女性活躍推進法が2016年4月に施行されてから2年あまりが経過した。政府の「すべての女性が輝く社会づくり本部」が掲げる「女性活躍加速のための重点方針2017」では、女性の起業支援の強化が盛り込まれ、「女性起業家等支援ネットワーク」を通じた支援環境の整備などが進む。また、今年1月には女性起業家支援の優良事例を表彰する「女性起業家支援コンテスト(ジョキコン)」が経済産業省主導で初開催されるなど、女性社長への関心の高まりとともに、さらなる支援制度の拡充が図られている。
・こうしたなか、帝国データバンク横浜支店では企業概要データベース「COSMOS2」をもとに、個人事業主、非営利・公益法人などを除く神奈川県内の企業約6万2000社を対象として、女性が社長を務める企業の割合について集計・分析した。
調査結果(要旨)
1. 2018年4月末時点の神奈川県内企業における女性社長比率は7.38%。30年前(1988年)は4.12%、20年前(1998年)は5.96%、10年前(2008年)は6.59%と推移し、全体では緩やかな上昇傾向が続いている
2. 女性社長の就任経緯をみると、男性社長に比べ「同族承継」の割合が高い。一方、「内部昇格」や「出向」の割合は低い
3. 年商規模別では、年商「5000万円未満」の小規模企業で9.50%と最高。以下、年商規模が大きくなるにつれて女性社長比率は低下した
4. 女性社長比率が高い上位業種をみると、「保育所」(44.7%)が唯一4割を超え最高。以下、「個人教授所」「美容業」「老人福祉事業」と続いた
5. 本社が所在する都道府県別でみると、「青森県」が10.60%で最高。「神奈川県」は33位
(主な内容)
1.女性社長比率の推移
・2018年 4月末時点の企業における女性社長の割合は 7.38% となった。1988 年(30 年前)は 4.12%、1998 年(20 年前) は 5.96%、2008 年(10 年前)は 6.59%と、女性社長比率は 緩やかな上昇傾向で推移し、2017 年(前年)比でも 0.03 ポ イントとわずかに上昇した。
・女性社長全体の就任経緯をみると、「創業者」は 40.6%、 「同族承継」は 45.5%、「内部昇格」は 8.1%、「出向」は 0.4% とそれぞれ占めた。また、2017 年 1 月以降 2018 年 4 月までに創業または就任が判明した新任の女性社長をみると、「創業者」14.7%、「同族承継」61.8%、「内部昇格」20.6%、「その他」2.9% となった。「創業者」の割合は、全体としては男性社長(48.2%)が女性社長(40.6%)を上回る ものの、新任社長では女性社長(14.7%)が男性社長(10.1%)を上回った。
・女性社長では「同族承継」の割合が男性社長に比べて高く、とくに新任社長では男性 29.2%に 対し、女性 61.8%と 2 倍超を占めた。前社長の高齢化や後継者不足を背景に、配偶者や親から経 営を承継する女性が増えたことが要因といえる。 他方、女性社長では「内部昇格」や「出向」の割合が低く、とくに新任社長では「内部昇格」が 男性 33.1%に対し、女性 20.6%と 12.5 ポイント低く、「出向」も男性 14.7%に対し、女性はゼロだった。企業における女性管理職の割合が低いことが大きく影響していると考えられる。
2.年商規模別
・年商規模別にみると、2018 年の女性社長比率は年商「5000 万円未満」が 9.50%で最高。以下、 年商規模が大きくなるにつれて比率は低下し、「100 億円以上」では 0.98%にとどまった。
・30 年前(1988 年)と比べると、年商「5000 万~1 億円未満」では 2.77 ポイント高まり、上昇 幅が最大となった一方、「100 億円以上」では 0.39 ポイントの高まりにとどまり、上昇幅は最小だった。
3.業種別
・業種別にみると、2018 年の女性社長比率は「不動産業」が 15.64%で最高となり、以下「小売 業」(10.03%)、「サービス業」(9.28%)と続いた。「建設業」は 4.56%と最も低く、全体(7.38%) を 2.82 ポイント下回った。
・30 年前(1988 年)と比べると、7 業種すべてで女性社長比率は上昇したものの、前年(2017 年) 比では「卸売業」「運輸・通信業」「その他」の 3 業種が減少となった。
・また、業種細分類別の上位をみると、 「保育所」(44.7%)が唯一 4 割を超え 最高となった。 以下、「個人教授所」(29.5%)、「美容業」(27.7%)、「老人福祉事業」(25.1%) と続き、育児や介護など生活のニーズ に関連した業種、また美容や教育といった業種で女性社長比率が高いことが分かった。
4.都道府県別
・本社が所在する都道府県別にみると、「青森県」が 10. 60%で最も高く、次いで「沖縄県」 (10.41%)、「徳島県」(10.39%)と、以上 3 県では女性社長比率が 1 割を超えた。このほか上位には中四国や九州エリアの県が目立 ち、総じて西日本で女性社長比率が高い。「神 奈川県」は上から33 番目だった。
・ 一方、最も低かったのは「岐阜県」の5.17% で、全体(7.78%)を 2.61 ポイント下回った。 「長野県」(5.82%)、「滋賀県」(5.88%)が これに続き、以上 3 県では女性社長比率が 5% 台にとどまり、下位には中部・東海エリアの県が目立った。
まとめ
・1986 年に施行された男女雇用機会均等法から 30 年あまりが経過。企業における女性社長の割合は、地域や企業規模、業種により差があるものの、30 年前、20 年前、10 年前と比べ、全体としては緩やかな上昇傾向が続いている。とはいえ、依然として女性社長の企業は 10 社に 1 社にも満たないのが現状だ。就任経緯をみても、前社長の高齢化や後継者不足を背景とした配偶者や親か らの「同族承継」の割合が高く、「内部昇格」や「出向」によって就任する割合は男性社長よりも 著しく下回っている。
・女性社長は女性管理職を登用する割合が高いことが明らかとなっており(「女性登用に対する企 業の意識調査」、帝国データバンク、2017 年 8 月公表)、ダイバーシティ推進への取り組みは相対 的に男性社長よりも積極的と考えられる。女性の活躍が注目されるなか、女性社長の割合が高まることで新たなビジネスの創出、それにともなう市場の活性化、女性雇用の促進などの進展が期待される。
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/…/s180602_20.pdf