<トピックス>「苦境にこそ挑戦を」 川崎の100年企業「住吉」の新しい挑戦 ・・・・・(以下「日本経済新聞」記事より)・・・・・
<トピックス>「苦境にこそ挑戦を」
川崎の100年企業「住吉」の新しい挑戦
・・・・・(以下「日本経済新聞」記事より)・・・・・
川崎大師、門前の老舗の変革
点照 神奈川 2021年12月15日
・例年300万人以上の初詣客でにぎわう川崎大師(川崎市)も新型コロナウイルスの影響で今年の人出は半減し、地元商店街は大きな打撃を受けた。その中で「苦境にこそ挑戦を」と変革に乗り出した和菓子店がある。
・川崎大師の定番土産として知られる「久寿餅(くずもち)」を山門前で製造販売する住吉は1917年創業の老舗だ。久寿餅は関西の葛餅と違って葛粉は使わず、小麦粉を発酵させて作るため、もっちりとした食感が特長。縁起物として喜ばれ、多くの参拝客が買い求める。
5代目社長の森明弘さん(53)は「繁忙期の三が日の売り上げは例年の2割程度に激減した。それまでは久寿餅を作って売るだけで精いっぱいだったが、店の将来を考える余裕が生まれた」と振り返る。
・住吉の売り上げの大半は久寿餅で、森さんは長年、「参拝客が品物を選ぶ楽しさがない」のが気になっていた。そこで、地元の若者たちが地域を盛り上げようとつくった任意団体「大師ONE博(わんぱく)」に相談。6月に有志が集まって新商品を開発するプロジェクトが始まった。
・メンバーは住吉の社員7人を含む約20人。中小企業の商品開発に関わる大師ONE博共同代表の杉谷昌彦さん(37)のほか、デザイナーや大手電機メーカーのエンジニアらが2、3週間に1度会合を開き、知恵を出し合う。「エンジニアも仕事では縁のないマーケティングに関われることを楽しんでいる」(杉谷さん)。パティシエのアドバイスを受け、9月には2つの菓子の試作品も完成させた。
・住吉は添加物を一切使わず、小麦粉のでんぷんのみを湧き水で約400日寝かせ、発酵させるという創業以来の製法を今もかたくなに守る。森さんは「伝統を守ることは第一だが、それだけでは社員の成長も店の将来もない。プロジェクトを通じて社員の意識が変わったのが何よりの収穫」と話す。社員たちは自社のSNS(交流サイト)で情報発信をしたり、休日に他のスイーツ店を巡ったり、と以前より積極的に仕事に取り組むようになったという。
首都圏の団体客からの注文も入り、「来年の三が日は例年の7割程度に売り上げは戻る」(森さん)見通し。新商品の発売は来年の初詣には間に合わなかったが、再来年には店頭で土産物を選ぶ楽しみが増えているはずだ。
(川崎支局長 名波彰人)