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[特別企画]『「本」からみた横浜の経営者(第6回)』

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山口三津男(1998)『情熱をもって生きよ』サン企画刊

本書を入手したのは出版後、比較的早い時期であったと思っている。私は当時、神奈川県中小企業センターで県主催の中小企業後継者育成講座のコーディネーター兼講師を行っていたが、講師のひとりとしてお招きした㈱小野測器の小野隆彦社長からいただいたのが、本書である。
小野測器は横浜市緑区にあり、東証第1部の上場企業であり、電機機器産業に分類される企業である。親交があり、教えていただいたという山口三津男の7回忌に寄せてつくられた本書の出版にかかわり、小野は「序にかえて」も書いている。
本書のおもしろいのは、山口の経営に対する思いや考えを“直筆”でしたためたメッセージ集になっていることである。それぞれは短文で書かれているので、山口の思いや考えをすぐさま知ることができる。
さて、山口は1992年に73歳で永眠しているが、神戸商業大学(現在の神戸大学経営学部)を卒業し、卒業後松下電器や松下電子工業などに勤務し、トップ・マネジメント(経営陣)になった人間である。1975年に渡辺測器㈱(現・グラフテック㈱)の社長になっており、この会社の社長時に若い小野は教えを受けている。小野にとっては山口はまさに経営に関するメンターであったというわけである。
直筆のメッセージは87頁に及んでおり、項目については以下のようになっている。「情熱をもって生きよ」「進歩」「計画」「経営者」「経営者の心得」「リーダーシップ」「仕事と人生」「商売」「利益」「革新」「知恵と知識」「心」「信念」「指導」「和」「時」「幸福」「不幸」「学習」「教育」「勤労」「謙虚」「合理化」「リーダーシップ(2)」「目標」「希望」「運命」「人生」「成功と失敗」「努力」「情熱「目標と希望」「決断」「失敗と成功」「管理」「変化」「企業」「低成長時代」「問題意識」「忍耐」「友情」「権限」「実践」「姿勢」「心構え」「意欲」「反省」「競争」「昨日、今日、明日」「客」「習慣」「文章」「スクラップアンドビルト」「倒産」「情報」「常識」「メーカー」「信用」「実行」「伝統」(60用語)
これらをみると、経営だけでなく、冒頭の「情熱をもって生きよう」など、人生に対する思いや考えも示されていることがわかる。そして、すべてが含蓄があり、なかには先人の言葉を含まれている。
それでは、現在の私にとって示唆的な言葉をいくつか載せてみる。
「進歩」
1年たったら疑え、3年たったら改め、5年たったら捨てよ。
「計画」
計画のための時間は最も生産的である。
「経営者」
経営は安定と進歩の上に成立つ。
「経営者の心得」
大企業と中小企業の差は、資本、人員の差ではない。事業に対する経営者の心構えである。大企業即一流企業ではない。
「利益」
利益はまぼろしである。何時消えるかわからない。
「教育」
教えるということは2度学ぶことである。
「リーダーシップ」
上3年にして下を知り、下3日にして上を知る。
「運命」
運は運なり、運転するものなり。
「努力」
ねたみ、やっかみ、そねみは努力しない人間のたわごとと知れ。
「失敗と成功」
成功は結果であり、目的ではない。
成功するのは偶然であるが、失敗には理由がある。
「企業」
企業とは本来つぶれるようにできている。
企業とは解決すべき問題の複合体である。
「心構え」
人生における成功、失敗は能力よりも心構えによる。
「客」
一客は百客をつくる。

いくつかあげてみましたが、皆様の心をうったえるものはありますか。

永続的成長企業ネットワーク理事 斎藤毅憲
(横浜市立大学名誉教授)