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[特別企画]『「本」からみた横浜の経営者(第3回)』

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谷口郁子(2011)『あきらめない主義―自分を始める30の視点』幻冬舎刊

3.11の報道をみて、いま自分はなにをすべきかを自問自答し、「あきらめない」でほしい」という願いをこめてまとめたのが、この本である。第1章「あきらめという殻を破る」(8項目)、第2章「肩の力を抜き進み続ける」(10項目)、第3章「もがいた先に見えてくるもの」(5項目)、第4章「自分の人生を大切に、そしてよく生きる」(7項目)、から構成されており、全体で30項目のヒントが書かれている。
第1章には「挫折には必ず出口がある」、「辛くても、無駄なことは何もない」、「目標は少しだけ先に設定する」、「チャレンジできることはありがたいこと」など、第2章には「男性は10年、女性は3年サイクルでものを見る」、「すべてにおいて100点を取らなくていい」、「苦手な人ほど受け入れると得るものが大きい」、「行き詰まりは、よそ見の余裕が解決してくれる」、「長く走り続けるマラソンランナーをめざす」などが書かれている。
そして、第3章には、「プライドという心の軸が成功の扉を開ける」、「よく聞くことが自分をステップアップさせる」、「人を束縛せず、自分も束縛せず」、最後の第4章には「自分を受け入れることが、生きやすさにつながる」、「年齢という制限を自分に設けるのはナンセンス」、「世界一長寿な日本人だからできることがある」などをあげている。
30項目は、すべてが読みやすくかかれており、女性起業家としてよく知られている著者の思いや考えが率直に示されており、ヒントになることが多い本である。著者は「手に職を」という父親のすすめで薬科大学に入学・卒業し、薬剤師となり、民間企業の研究所に就職している。結婚を機に退職し、約1年半の子育て期間をおいて調剤薬局に勤務している。2年間勤務のあと、1989年に「イムノエイト」という調剤薬局を鶴見区の商店街に設立している。
設立にあたってのコンセプトは「かかりつけ薬局」である。クリニックについては、“かかりつけ”という言葉がよく使われてきたが、地域に根ざした、患者の立場にたった調剤薬局をつくりたいとの思いで、このコンセプトを重視している。具体的には、1人の患者をきっかけにして、患者家族の薬歴、健康問題などの情報を獲得して、それを通して利用者である患者に対して最良の医療サービスや対応を行えることを目的としている。鶴見区だけでなく、神奈川県や東京首都圏で行動を展開し、現在では事業展開を多様化させるとともに、医療(キュア)と介護福祉(ケア)の橋渡しに尽力している。2002年には「世界優秀女性起業家賞」を授賞している。
なお、2002年には、「あなたはどんな『老い』を生きたいですか?」(アートデイズ刊、本文230頁)を公刊し、デンマーク、アメリカ、日本の高齢者福祉の実態について書いている。この本の序は日野原重明先生が推薦の意味を込めて寄せているが、キュアとケアに関する新しい知見を示す力作で、専門書といえるものと評価している。
「イムノエイト」の本社は、現在東京に移っているが、著者は横浜を代表する女性経営者のひとりであり、今後の活動に期待したい。
(イムノエイト㈱ http://www.immuno8.com/

永続的成長企業ネットワーク理事 斎藤毅憲
(横浜市立大学名誉教授、放送大学客員教授)