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[特別コラム:第5回]『 障がい者を戦力にする!<合理的配慮 その1>』

[特別コラム:第5回]
『 障がい者を戦力にする!<合理的配慮 その1>』

1. 振り返り
・ 組織内ミクロ労働生産性の観点とは、会社全体の生産性を個々の従業員の労働生産性に還元し、さらに個々の従業員の動作の効率性にまで還元して考える発想です。この観点に基づくと、一人一人の生産性をいかに高めるか、一人一人をいかに働かせるか、という視点で作業現場や人事制度の設計をおこなっていくことになります。多くの企業が失敗した成果主義も、コストを抑えつつ、一人一人をめいっぱい働かせる方策として注目を浴びました。成果主義は、組織内ミクロ労働生産性の発想に基づくのです。
・もちろん、様々なつながりや影響関係の下で行われる現代の仕事においては、成果主義は、愚策です。それを端的に示すのが、組織内マクロ労働生産性の考え方でした。

2.障がい者を戦力にする!
・ ただ、どうしても、企業も従業員も、一人一人がいかに働くかに目がいく傾向があります。特に、単純作業やモノづくりの現場においては、その傾向が強いことがうかがえます。
そうすると、健常者よりも労働生産性が劣ると思われがちな障がい者の雇用が進まないことにもなるのです。
しかし、様々な工夫で障がい者の労働生産性を上げ、採算ラインに乗せたり、業績を改善したりし、会社の永続を図ることは可能なのです。組織内ミクロ労働生産性の観点から障がい者個々の労働生産性を上げる取り組みが、「障がい者の戦力化」です。このシリーズでは、障がい者を戦力化するための工夫の要素を4つ挙げ、1つずつご紹介しましょう。もちろん、それぞれの要素は、排他的ではなく、単独で取り組まれることもあれば、組み合わせて取り組まれることもあります。今回は、「合理的配慮」です。

3.合理的配慮とは?
・ 障がい者が生活をしたり、仕事をしたりする際、まちや社内が健常者のために設計されているなどのために、生活しにくかったり、仕事がしにくかったりする場合があります。そのような障壁は、至る所にあります。例えば、車イスの場合、階段しかなければ、階下や階上に移動することは難しくなります。
・それに対して、みなで車イスごと運ぶ、エレベーターを設置するなどすれば、移動ができます。周りのちょっとした気遣いで、生活や仕事がしやすくなるのです。このような気遣いを「合理的配慮」と言います。
・とはいっても、「合理的配慮」は、心優しい人や奇特な人が行うものというわけではありません。日本は、2014年に障害者権利条約を批准しました。その第二条で、合理的配慮の否定が障がい者に対する差別であることが明記されています。「合理的配慮」は、みなが行わなければならないものなのです。
・ただ、周りの負担が尋常ではなかったり、会社が倒産するほどのコストがかかったりという場合、「合理的配慮」の枠をはみ出ます。周りの負担がかかりすぎない範囲で行われるものが「合理的配慮」です。

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学教授  影山 摩子弥