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[特別コラム:第3回]『組織内マクロ労働生産性の時代』

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1.つながりが意味を持つ
日本のサービス産業がGDPの7割を超えていることに象徴されるように、先進国では、第2次産業であっても、フィスワークや知的労働が多くなり、社員は、チームの形をとったり、チームとまではいかなくとも、つながりの中で仕事をしたりしています。つながりの中で行われる仕事においては、相互に影響を与えあって仕事をすることになりますから、仕事の成果を一人一人に還元する発想は、そぐわないことになります。
つまり、つながりの中で生まれた成果が持つ価値は、一人一人のがんばりや才能に還元されるだけでは不十分で、相互に与え合って生まれる効果の影響を考慮に入れなければなりません。

2.組織内マクロ労働生産性の観点
つながりの中で生まれるこのような効果を相乗効果(シナジー効果)と呼びます。「三人寄れば文殊の知恵」は、一人一人では生まれない知恵が、3人寄れば生まれるということですから、相乗効果が生む付加価値についてのことわざということができます。
シナジー効果に着目した、このような労働生産性の考え方は、要素が集まり相互に影響を与え合うことによって、要素に還元できない効果が生まれるという現象を表現する「マクロ」という用語を使い、「組織内マクロ労働生産性」と呼ぶことができます。マクロ経済学の創始者であるケインズは、まさに、個々に還元できないマクロ的効果を考えていたのです。
もちろん、以前から、チーム労働生産性という考え方はありました。でも、チームという用語に惑わされてはいけません。チームでなくとも、従業員は相互に影響を与え合って仕事をしているのです。それを表現するために、私は、「組織内マクロ労働生産性」という用語を使っています。

3.マイナスのシナジー効果に気を付けよう
もちろん、シナジー効果は、プラスの効果だけではありません。マイナスの効果もあり得ます。
一人一人の能力はそこそこだが、意思の疎通が取れていて、チームワークが良いグループと、一人一人は高い能力を持つが、仲が悪く、足の引っ張り合いをしているグループとでは、前者の方が高い労働生産性を示す(いい仕事をする)場合がよく見られます。
前者の場合では、プラスのシナジー効果が生まれているのですが、後者の場合、足の引っ張り合いで、マイナスの効果が生まれている可能性があるのです。

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学教授   影山摩子弥