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[特別コラム:第20回]『第20回 障がい者雇用を経営戦略化しよう』

[特別コラム:第20回]
『第20回 障がい者雇用を経営戦略化しよう』

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1. 図にしてみよう(図参照)
・20回にわたって続けてきたこのシリーズもいよいよ最終回です。
第14回から第19回にかけて事例を交えながら説明してきた障がい者雇用が生む経営改善効果について、図を用いて解説しておきましょう。
・今、仮に、健常者社員が5名いるとします。労働生産性をひとり当たり1.0とすれば5名で5.0になります。
・そこに、障がい者を1名雇用し、健常者社員と一緒に働いてもらうとします。障がい者の労働生産性を0.5とすれば、全体の労働生産性は、5.5になるはずです。
・しかし、前回まで取り上げてきたコミュニケーションの活性化(社内の雰囲気改善)や人材育成ノウハウの形成、社員の意識改善、役割分担効果などが得られたとすれば、健常者社員の労働生産性が改善するはずです。
・仮に、健常者社員の生産性がそれぞれ20%改善したとすると、健常者社員全体の労働生産性は、5.0から6.0になります。障がい者社員の労働生産性は全く変わらなかったとすると、全体で6.5になります。健常者社員1人分が生み出されたことになります。

2.業績にも影響しうる
・障がい者が健常者に影響を与え、健常者社員の労働生産性が改善するとすれば、実際には収穫逓減傾向が出ると思いますが、障がい者社員を取り巻く健常者社員が多ければ多いほど、全体の労働生産性の改善効果も大きくなります。
・そうなれば、業績に影響を与えるほどの効果になっても不思議ではありません。これが、現代において組織内マクロ労働生産性に着目し、その改善方法を考えるべき理由なのです。

3.基本は戦力化の取組み
・では、障がい者雇用を健常者の労働生産性UPに結び付けるには、どうしたらよいでしょう。
・経営改善効果にかかわる事例の中で示唆しましたが、障がい者を戦力にするために、合理的配慮をおこなったり、訓練したり、仕事とのマッチングを図ったり、付加価値を上げたりする取組みが、経営改善効果に結び付くと言ってよいでしょう。
・つまり、合理的配慮によって健常者も働きやすくなります。障がい者を育てるノウハウが、健常者社員の人材育成に流用できます。マッチングの視点が、健常者の仕事に対するマッチングにつながりますし、役割分担効果を引き出します。付加価値を上げる取組みは、そのまま労働生産性や費用対効果の改善に結びつきます。さらに、障がい者にやりがいを持って働いてもらおうという取組みが、職場のコミュニケーションや雰囲気を改善します。

4.CSRで障がい者雇用の戦略化を!
・障がい者雇用は大変であるかに見えます。実際、大変な場合もあるでしょう。しかし、それだけに、戦力化できたり、経営改善効果を引き出すことができたりした場合の果実も大きいと言えます。それが、法的義務も課されていないのに、多数の障がい者を雇用する中小企業が存在する背景でもあるのです。
複雑さを増し、混迷を極める現代社会は、前例がなかったり、誰も踏み込まなかったりする領域を開拓するための緻密な経営戦略を求めています。その経営戦略をもたらす観点がCSR(企業の社会的責任)なのです。                <完>
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学教授  影山 摩子弥