[特別コラム:第15回]
『第15回 障がい者雇用が生む経営改善効果<社内の雰囲気改善 その1>』
1. 成果主義が業績を落とす
・大分県にある甲斐電波サービス株式会社は、従業員が10人ほどの会社で、電話やコピー機を企業に販売する営業会社です。この会社では、成果主義を導入したことで、業績を落とすことになりました。
・社員間のつながりのなかで仕事が行われる場合、個々の成果を確定できないはずであるにもかかわらず、個々の成果で処遇が決まるとすれば、会社や経営層に対する不信感も高まります。
・また、同僚が競争相手です。同僚に有利な情報を教えた場合、同僚が高い評価を得る成果を出したとしても、自分はなんら評価されません。その結果、社員間のコミュニケーションが低下し、重要な情報も共有されません。
・会社や経営層の求心力も低い、内部コミュニケーションも停滞しているとすれば、業績が落ちない方が不思議です。
2.実習生が会社を救う
・この会社は、倒産寸前までいきました。
・しかし、その中、知的障がいがある実習生を受け入れ、パソコンで入力作業を行ってもらいます。そうしたところ、実習生を軸に、社員間のコミュニケーションが復活します。
・また、社長が実習生に、毎日、ドリルの宿題を出します。知的障がい者であっても、少しずつ成長します。そのゆっくりとした成長が見えるようになると、健常者社員の成長がはっきりと見えてきます。社員の成長を本人に指摘すると、社長が自分のことをそれ程気にかけていてくれたのかと、社長に対する信頼感や求心力も生まれます。
・ただ、実習が終わり、実習生が帰ってしまうと、また前と同じ状態になります。再度、実習生を受け入れると、社内が活気を取り戻します。何度か繰り返し、最終的に実習生を正規雇用します。
3. 業績がV字回復
・受け入れた知的障がい者のおかげで、倒産寸前までいった甲斐電波サービスは、業績がV字回復します。
・障がい者を雇い、その労働生産性をいかに上げたからと言って、V字回復するほど業績に影響を与えるでしょうか?健常者社員一人一人の仕事に対するモチベーションや会社に対する求心力(態度的組織コミットメント)、情報共有などによって、健常者社員の労働生産性、もしくは、業務パフォーマンスが上がり、業績にまで影響を与えたのです。
*甲斐電波サービスの事例については、以下のサイトが詳しいです。
http://www.doyu.jp/topics/posts/article/3-3-2
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学教授 影山 摩子弥