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[特別コラム:第13回]『第13回 障がい者を戦力にする!<付加価値戦略 その4>』

[特別コラム:第13回]
『第13回 障がい者を戦力にする!<付加価値戦略 その4>』

4.情報セキュリティの重要性
・近年、有名企業で情報流出不祥事がありました。膨大な数の情報流出であったことに加え、B to Cの業務を行う企業であったため、流出した情報の主が一般の市民、特に子どもが含まれていたこともあり、注目を浴びました。この不祥事の背景は、親会社が子会社に情報管理を任せ、その子会社がさらに、コスト削減の一環かと思いますが、外部委託しており、外部委託先の社員が情報を持ち出したということでした。
・「外部委託先が悪い」という企業のロジックは通用しません。どのような契約を結んでいたとしても、社会は、「コスト削減かなんか知らないが、そんな会社に任せるからだ。不祥事を起こしたのは、そんな会社に任せたおたくの責任だ」となるのです。
・この不祥事事例にみられるように、情報セキュリティは極めて重要です。顧客情報などが流出すれば、信用も失いますし、損失も出るでしょう。信頼を回復するための対策をとるコストも膨大なものになる可能性があります。

5.情報セキュリティの難しさ
・しかし、情報セキュリティだけではなく、BCPなども含めて、リスクマネジメントの取組みは、重要であるということがわかっていても、なかなか進まない傾向があります。売り上げが上がった、意識が高まったなどといった「変化」をもって効果が見えないからです。
何も起こらない状態が、リスクがコントロールされている状態です。目に見える分かり易い検証ができないので、取組みをしているから何も起こらないのか、なにもしなくてもそのままなのか、わからないですし、どこまで何をやったらよいのかも見えにくいのです。そうすると、かけているコストの合理性が見えません。いかんせん、手を緩めたり、情報処理の外部委託でコスト削減を図ろうということにもなります。
・しかし、その結果、不祥事に至れば、削減したコスト分などいっぺんに吹っ飛ぶどころか、本来かけなくてもよい補償費や今後の対策費など、クライシスマネジメントや今後に向けてのリスクマネジメントの膨大なコストがかかります。
しかし、サンクステンプの事例では、特例子会社に任せることによって、親会社は、低コストで、効果的な情報セキュリティができていたのです。

6.なぜ、障がい者か?
・情報セキュリティの重要性を認識している企業は、社内の紙ごみを専門業者に任せて溶解処理までしています。重要な情報が印刷されている可能性があるからです。
・しかし、オフィスのごみ箱から溶解処理業者に渡るまでは現物がありますので、情報流出事故につながる可能性があります。
・つまり、安いからと、オフィスごみの回収を外部の業者に任せた場合、オフィス内に外部者が入り込むことになりますし、重要な情報が記載されたごみを外部委託先の作業員が持ち出すかもしれません。健常者なら、情報を見て、重要かどうかわかる可能性もありますし、わからなくても、金になるかもと、持ち出すかもしれません。
・しかし、知的障がい者なら、ごみに記載された情報の意味を認識しませんし、言われたとおりに黙々と仕事をします。オフィスのごみ箱から、溶解業者にわたるまでの情報流出リスクを極めて低くすることができるのです。
・この事例の意義は、2つあります。1つは、作業の付加価値を高め、費用対効果や労働生産性を改善している点です。もう1つは、「障がい者でもできるから」ではなく、「障がい者だからこそできる作業」という構図を作っている点です。
・モノは言いようと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、現場の工夫が光る事例と言えるでしょう。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学教授  影山 摩子弥