[特別コラム:第10回]
『第10回 障がい者を戦力にする!<付加価値戦略 その1>』
1.社会性の戦略化
・障がい者の雇用というと、社会貢献という言葉をイメージする方も多いのではないでしょうか?企業が行う社会貢献活動というと、企業が寄付をしたり、社員を上げて清掃活動をしたりといったように、社会にとって良いことをするという側面(このような面をここでは「社会性」と呼びます)とともに、しかしながら同時に企業の経営にとって意味がない、負担になるという側面がイメージされるのではないでしょうか?
・しかし、詳述は避けますが、現代では、社会貢献活動は、ポイントをおさえれば、経営戦略化すること、つまり、社員のモチベーションを上げる、顧客の評価を生む、地域社会と良好な関係を形成する(地域対策になる)など、経営にとって意味を持たせることが可能です。
2.社会性は品質のリボン
・しかし、気をつけねばならないことは、社会性だけでは製品は売れません。品質が良くなければ、お情けで多少は売れたとしても、売り上げは芳しくありません。障がい者が作ったものは、品質の点で見劣りすることも多く、売り上げが伸びません。そのため、福祉作業所では、最低賃金どころか、障がい者が受け取る賃金が月額数千円などという場合もあるのです。フェアトレード製品が伸び悩む場合がるのも同様の理由と言えます。
・「品質は悪いけれども、障がい者が作りましたから買ってください」、「第3世界の貧しい人たちが一生懸命作りました。品質は悪いけれども買ってください」と言っても、売れないのです。
・品質が悪いということは付加価値が低いということです。付加価値が低いものにお金を出すのであれば、品質以外で、価格に見合う、もしくは、それ以上の付加価値があることが必要です。しかし、社会性は品質の低さをカバーするほどではないのです。
・したがって、社会性は、品質に乗るリボン程度に考えておく必要があります。ちなみに、第7回でふれた鎌倉のお弁当屋のバニーフーズも、障がい者雇用をウリにしてお弁当を売るようなことはしていません。厳選された素材で、本当においしいお弁当を作ったり(製品品質)、「肉抜きのお弁当にして」などといった顧客の要望に柔軟に対応したり(業務品質)しているのです。
3.バカ売れクッキー
・プルデンシャル・ジェネラル・サービス・ジャパン(以下、PGSJと略記)は、プルデンシャル生命の特例子会社です。特例子会社とは、その子会社と合算で親会社の障がい者雇用率を算出してもよいと認められた特殊な子会社で、親会社の業務では、障がい者を雇用できるだけの業務を切り出せない、障がい者用の給与体系を別に設定できないなどの理由で、設置されている子会社です。
・したがって、特例子会社が無くなると法定雇用率をクリアできなくなるので、親会社の負担で維持されている場合も少なくありません。しかし、PGSJは親会社に負担をかけないことをコンセプトに立ち上げられました。そのために、一流のシェフに指導してもらい、どこに出しても勝負できるほどのおいしいクッキーを作ります。モンドセレクションで金賞を取っているほどです。
・しかし、このクッキー、巷には出回りません。あまりにもおいしいので、プルデンシャル生命の営業社員が、顧客先に持っていくために購入して、それですべてはけてしまうのです。それほど売れれば、障がい者に最低賃金を払うこともできるでしょう。
「写真PGSJ HPより」
*PGJSのクッキーは以下に掲載されています。
http://www.with-pgsj.com/
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学教授 影山 摩子弥