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[特別コラム:第6回]『第6回 障がい者を戦力にする!<合理的配慮 その2>』

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[特別コラム:第6回]
『第6回 障がい者を戦力にする!<合理的配慮 その2>』

4.色分けで生産性UP
・川崎市にある日本理化学工業(株)では、チョークを作っています。その生産ラインで作業をしている従業員全員が知的障がい者です。この会社では、障がい者が働きやすくなるように、様々な工夫をしています。障がい者が働きやすければ、労働生産性も上がります。
・例えば、チョークを作るためには、生産ラインに原料を投入せねばなりません。もちろん、適当に投入すればよいのではなく、チョークの生産量に合わせて原料を入れねばなりません。その際、知的障がいの程度によっては、「赤いチョークの原料を~㎏投入して」と指示しても、どれが赤いチョークの原料なのか、~㎏をどうやって量ったらよいか、がわからない場合があります。
・そこで、日本理化学工業(株)では、原料が入った容器のふたに、赤や青といったチョークの色を付け、一方で、投入する重さに相当するおもりにも同じ色を付け、天秤で量らせるということをしています。つまり、赤いチョークの原材料を投入する際には、天秤の一方に赤いおもりを乗せ、もう一方に、赤い蓋が付いた容器に入った原料を乗せ、釣り合ったら投入するのです。そうすれば、重度の知的障がい者でも、間違うことなく原料を適量投入することができます。
「写真:日本理化学工業HPより」
・重度の知的障がい者でも、信号の色の判別ができ、事故に合わずに通勤してくることに気付いた社長(当時)が編み出した工夫です。
・この工夫が優れているのは、知的障がい者でもできるというだけでなく、重さを量って投入するだけでしたら、健常者も同じ作業になるので、健常者であろうと障がい者であろうと、生産性はさほど変わらないということです。

5.穴で検品
・さらにこの会社では、チョークの検品をする際、ノギスなどの器具で測るのではなく、金属板に、合格品ならば通る大きな穴と、合格品ならば通らない小さな穴をあけ、大きな穴を通らなければ太すぎる、小さな穴を通れば細すぎるという選別ができるようにしています。これも、健常者がやっても障がい者がやっても作業効率はさほど変わりません。

6.工夫の意味
・色づけの区別も、穴に通す工夫も、障がい者の作業がしやすいようにするもので、「合理的配慮」と言ってよいでしょう。
組織内ミクロ労働生産性の観点から見た場合、単体での労働生産性が低ければ、「雇用できない」という判断につながりますし、組織内マクロ労働生産性効果を生みにくい職場の場合、実際に、業績に影響を与える可能性もあります。
・しかし、上記のような「合理的配慮」によって障がい者の生産性が上がり、経営にとってプラスになるのであれば、障がい者の雇用は経営の負担にはなりません。それどころか、経営の永続につながります。実際、日本理化学工業(株)は、障がい者を多数雇用していても、業績がよく、元気に経営を続けているのです。

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学教授  影山 摩子弥