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[特別コラム:第2回]『組織内ミクロ労働生産性の発想を乗り越えろ』

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1.労働生産性とは
障がい者雇用のお話を進める前に、「労働生産性」についてお話しておかなければなりません。
労働生産性とは、労働1単位につきどれだけの価値を生み出したかを示す指標です。わかりやすく言えば、労働者1人当たりどれだけの付加価値を生んでいるかということです。
付加価値とは、あるサービスや製品が持っている価値と、そのサービスや製品を生み出すために用いられた原材料や機械の価値との差のことです。
ですから、工場などで従業員が同じものを作っている場合、1日で作った個数が多ければ多いほど、その従業員は、労働生産性が高いということになります。
通常、ある会社もしくはある国の労働生産性は、次のように計算します。

〔 労働生産性 = 会社もしくは国全体の付加価値額/従業員数 〕

もちろん、同じものを作っている場合は、その個数が労働生産性を表しますが、同じ原材料や道具を使って、もっと質がよいもの、価値が高いものを作った場合はどうでしょう。その場合も、付加価値は高くなりますから、労働生産性は高くなります。素晴らしいデザインを考える、人々の目を引く企画を立案する、問題の効果的な解決策を導くなどといった場合が考えられます。

2.組織内ミクロ労働生産性
上記の式を見るとわかるように、労働生産性は、「一人一人の従業員の生産性」という発想に結びつきやすい性格を持っています。
これは、近代社会が、技術革新によって第2次産業の生産性を上げ、発展してきたことを背景にしています。製造業にみられるように、第2次産業では、複数名が協力して行う作業もありますが、それぞれが行っている作業とその成果とを結び付けやすいので、一人一人がどれだけ成果を出しているかという観点で考える傾向が強くなります。つまり、一人一人の生産性という観点が強くなるのです。
しかし、一人一人に還元するだけではありません。一人の従業員という単位ではなく、その従業員が行う一つ一つの動作にまで還元して生産性を考える発想も出てきます。工場全体の生産性を一人一人の生産性が集積したものと考え、さらに、一人の生産性を、その一人が行う一つ一つの動作の生産性が集積したものと考えるのです。
このような労働生産性の考え方を私は、「組織内ミクロ労働生産性」と呼んでいます。「ミクロ」は、要素に還元するニュアンスがあるからです。テイラリズム(ないしフォーディズム)はその典型的な例です。            <図:下記掲載>
このような労働生産性の考え方をしている場合、労働生産性を上げようとするのであれば、一人一人の生産性を上げる方策を考えることになります。
どれだけの成果を出したかで処遇を決める成果主義は、一人一人の労働生産性を上げることが全体の生産性を上げ、ひいては会社の業績を上げることにつながるという観点を持つので、組織内ミクロ労働生産性の発想に基づく方策といえます。
しかし、現代の雇用の現場をとらえるには、このような労働生産性の発想では不十分です。特に、障がい者雇用の経営上の意味をつかむには、もう1つの労働生産性の考え方が必要です。

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学教授   影山摩子弥