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[特別コラム:第7回]:『第7回 障がい者を戦力にする!<合理的配慮 その3>』

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[特別コラム:第7回]
『第7回 障がい者を戦力にする!<合理的配慮 その3>』

7.お弁当屋の取組み
・製造業は、「合理的配慮」がしやすいとお思いになる方もいらっしゃるかもしれません。異なる例をご紹介しましょう。
・鎌倉材木座海岸にあるバニーフーズというテイクアウトのお弁当屋も多くの障がい者を雇用しています。
・多重障がいがある従業員や重度の知的障がいがある従業員も少なくありませんが、後者の場合、複数のことを同時に指示してもこなせないため、その日にやるべき仕事を社長や健常者社員がホワイトボードに書き出し、こなしたら、本人が1つずつ消していくという工夫をしています。こうすれば、やるべきことを覚えていなくてもよいですし、誰かが1日中ついていなくとも、自分で管理できます。
「写真:バニーフーズHPより」

8.現場の課題
・健常者でも、仕事に就いたばかりの頃はわからないことばかりで、研修資料を振り返ったり、先輩社員に尋ねたりすることもあるでしょう。障がい者も同様です。ただ、障がい者の場合、適宜、まわりの社員に質問するといったことができない場合もあります。質問事項を適切に整理し、相手をつかまえ、尋ねるということが難しい場合も少なくないのです。
・そうすると、障がい者に対して、「わからないことがあったら、いつでもだれでもいいから訊いて」というのは、かえって不親切になりかねません。仕事にも、会社にも慣れることができず、社内に気軽にお話ができる人もおらず、疎外感を感じて辞めてしまうことにもなるのです。

9.現場で障がい者を支える
・そこで、社内の状況がわかった従業員がジョブコーチ(2号ジョブコーチ)となり、障がい者を支える取り組みをする企業が増えてきました。
・また、新宿で飲食店「牛タンのねぎし」を展開する株式会社ねぎしフードサービスでは、ブラザー/シスター制をとり、障がい者につく社員を指定し、障がい者がいつでも特定の先輩に相談したり、質問したりできるようにしておきます。障がい者にとって、苦労せずとも、社内に親しい先輩社員ができたことになります、わからないことがあっても安心です。
「写真:ねぎしHPより」
・2号ジョブコーチも、先輩社員も、障がい者の意向や体調、雇用にかかわる課題などを会社に伝えて対応を促したり、伝わりにくい社内情報などを障がい者に伝えたりすることもできます。
・札幌にある株式会社特殊衣料では、リネンサプライ部の齋藤係長が2号ジョブコーチとなり、会社と障がい者をつなげています。会社のことも理解し、障がい者のことも考える観点を持ちつつ客観的立場で会社にアドバイスをしており、社長の池田啓子さんも大変助かっていると言います。
・ちなみに、就労継続支援B型事業所のシャロームの家は、利用者(障がい者)が職員(通常は健常者)になるという取組みをしています。利用者である障がい者の目標にもなりますが、障がい者と健常者職員の間を取り持つ重要な役割も果たしています。
・この取り組みは、企業にも応用できそうです。障がいを理解している先輩障がい者社員が後輩障がい者社員の支えになったり、会社と障がい者をつないだりすることもありうるのではないでしょうか。

10.工夫の意味
・ホワイトボードへの記載も、「合理的配慮」です。そんなことかとお思いになるかもしれませんが、「合理的配慮」は、格段の負担をかけずに行うことが基本です。大きな負担でなければ、負担感やコスト感も低く、取り組みやすいはずです。
・2号ジョブコーチやブラザー/シスター制も、人的、心理的障壁を軽減し、障がい者が仕事に慣れたり、会社に適応したりしやすい状況を生み出している点では、「合理的配慮」の取組みと言ってよいでしょう。
・これらを背景として、障がい者の職場への定着を進めることにもなるでしょう。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学教授  影山 摩子弥