[永続企業へのヒント:この一冊] ~坂本光司『人を大切にする経営学講義』PHP研究所2017年~
[永続企業へのヒント:この一冊]
~坂本光司『人を大切にする経営学講義』PHP研究所2017年~
・著者の坂本光司氏は、法政大学大学院政策創造研究科教授。人を大切にする経営学会会長。1947年静岡県出身。1970年法政大学経営学部卒業。静岡文化芸術大学文化政策学部、同大学院教授を経て現職。他に、日本でいちばん大切にしたい会社大賞審査委員長等、公務多数。主な著書は『日本でいちばん大切にしたい会社1~5』(あさ出版)『日本の「いい会社」地域に生きる会社力』(ミネルヴァ書房)、『さらば価格競争 非価格経営に取り組む21社の実践』(商業界)、『「日本でいちばん大切にしたい会社」がわかる100の指標』(朝日新聞出版)など。
中小企業経営研究の第一人者として、これまで8,000社を超える企業への訪問調査・アドバイスを行う。(出版時)
内容紹介
・累計70万部シリーズ『日本でいちばん大切にしたい会社』の著者が「企業は誰のものか」「適正利益率」「正しい生産性向上活動」などのテーマを纏めた坂本流・経営理論の決定版!
企業経営とは何か/企業は誰のものか/正しい競争/適正利益率/人財の確保・育成策/大家族的経営/企業の社会的責任/経営者の使命と責任/正しい生産性向上運動etc。
企業・組織のリーダーへ!「毎日の仕事に役立つ」教え満載。
目次
はじめに
第1章 企業経営とは
第2章 人を大切にする経営学とは
第3章 経営者の使命と役割とは
第4章 有効需要ではなく有効供給とは
第5章 正しい競争とは
第6章 非価格経営を進めることとは
第7章 業績とは
第8章 感動経営学とは
第9章 人財経営とは
第10章 企業は環境適応業とは
第11章 大家族的経営とは
第12章 経営理念・高い志とは
第13章 人が育つ経営とは
第14章 五方良しの経営組織と生産性とは
第15章 国際経営とは
主な内容
・日本の経営学は、欧米先進国から輸入された学理論がベースになっていることもあり、長らく株主重視、管理重視、業績重視、成長重視、コスト重視といった経営学が教えられ・学ばれてきたといっても過言ではない。
・時代が「右肩上がり」であり、「物の豊かさ」が重視される時代ならばともかく、時代はいまや「右肩下がり」であり、物の豊かさより、はるかに「心の豊かさ」を求める時代である。こうした時代になおも、旧態依然とした業績重視、勝ち負け重視といった、人ではなく、企業重視を展開したならば、その企業は間違いなく、やがてつじつまが合わなくなっていき内部崩壊してしまうと思われる。
・近年、わが国を代表する巨大産業が相次いで問題を露呈し、外国企業に身売を余儀なくされる企業や哀れな幕切れをする企業が続出しているが、問題の本質はここにあると言える。
・組織運営の基本原理・原則は「喜びも・悲しみも・苦しみも、ともに分かち合う」であり、「誰かの犠牲の上に成り立つビジネスが長続きするはずがない」
・どんな行動にも、「目的」」「手段」そして「結果」の三つがあるが、最も大切なことは手段でも結果でもなく、目的である。企業経営の最大目的・使命は「関係する人々の永遠の幸せの追求・実現」であり、業績や勝ち負けは、そのための手段もしくは結果に過ぎない。
・本書は「正しい経営」「人を大切にする経営」「社員とその家族第一主義経営」をさらに進めようと考えている企業関係者や、これからそうした企業経営を目指そうと考えている企業関係者、さらにそうした企業を支援するために存在している関係者の方々にとって少しでも参考になれば幸いである。 以上、「はじめに」から。
・企業の成長は、企業の最大資源である人、とりわけ社員の成長の総和。つまり、社員が成長した分だけ、企業は成長するのであり、それゆえ、「社員を伸ばして会社を伸ばす」というのが、正しい経営である。
・人を大切にする経営学では、企業経営の目的・使命は、5人の永遠の幸せの追求・実現。
5人とは、「社員とその家族」「社外社員(仕入先・協力企業)とその家族」「現在顧客と未来顧客」「地域住民、とりわけ障がい者や高齢者など社会的弱者」「出資者ならびに関係機関」
人を大切にする経営とは、「関係する人々の心からの組織愛を高めるための経営学」である。
・企業間の格差は、経営者格差、とりわけ「経営者の経営に対する考え方、進め方格差」。
・経営者の担うべき仕事は「方向の明示」「決断」「社員のモチベーションアップ」「経営者こそが最も働くこと」「後継者を発掘し、育てること」。
・企業を隆々と成長・発展させつつ継続させていくために重要なことは、後継者の育成とタイミングのよいバトンタッチである。どういうタイミングかは、「現経営者の起業家精神が萎えて来たとき」「経営者の基本使命と責任に関するもので、肉体の衰えも含め、これらができなくなってきたとき」「企業の業績」「ふさわしい後継者が育ったとき」。
・企業の盛衰は人財が決定する。いい企業の経営者や管理職は、自身の最大の仕事・使命を、部下を育成し、幸せにすることと心得ている。
・いい企業に、もともと人財が豊富にいたわけではない。普通の人々を素晴らしい人財に変身させてしまう、見事な組織風土、企業文化が形成されている。
・働きがいのある経営をするためには、「いい職場の存在」「いい仕事の存在」「いい上司の存在」「いい仲間の存在」「いい家族の存在」の5条件の強化・充実。
・成果主義は危険。年功序列を勧める。行きすぎた成果主義は、組織内に次第にギスギス感がはびこっていき、最も大切な温もりが消え失せていく。
・企業は環境適応業であり、その環境が日常的に変化していることを踏まえれば、企業はまさに変化適応業なのである。もっとはっきり言えば「変化なくして成長なし」。
・本書は平成30年3月をもって、大学を定年退職される著者のまさに経営理論の決定版、渾身の力作といっても過言ではなく、企業の長寿・永続を目指す経営者・中小企業には参考になる一冊である。