お役立ち情報詳細


[永続企業へのヒント:この一冊] ~グロービス経営大学院著/田久保善彦監修『創業三00年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか』東洋経済新報社~
[永続企業へのヒント:この一冊]
~グロービス経営大学院著/田久保善彦監修『創業三00年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか』東洋経済新報社~
・著者のグロービス経営大学院は、社会に創造と変革をもたらすビジネスリーダーを育成するとともに、グロービスの各活動を通じて蓄積した知見に基づいた、実践的な経営ノウハウの研究・開発・発信を行っている。
・監修の田久保善彦氏は、株式会社三菱総合研究所を経て現在グロービス経営大学院経営研究科研究科長。慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修了。スイスIMD PEDコース修了。経済同友会幹事、経済同友会教育改革委員会副委員長(2013年度)、ベンチャー企業社外取締役、顧問、NPO法人の理事等も務める。
[本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの](2014年出版時)。
内容紹介
300年以上の長寿企業は605社!
日本は、世界の長寿企業の4割を占めているという。
創業300年企業は605社あり、室町・戦国時代に創業された500年以上の企業は39社。
創業1000年を超える超長寿企業は7社あり、世界最古の企業も日本に存在する。
まさに「長寿企業大国ニッポン」と言えるのである。
本書では概ね10代以上の経営トップが受け継ぎ300年以上の歴史があり、50億円以上の売り上げがある企業を「日本型サスティナブル企業」と定義し、様々な角度から検討を加えた。
月桂冠、岡谷鋼機、ヤマトインテック等々、多くの長寿企業を取材し、変化が速く大きいこの時代に、これらの企業から学ぶべきことを提示するものである。
目次
はじめに
第1章 300年長寿企業 武士の時代から続く日本企業
第2章 顧客価値を提供し続ける
第3章 身の丈経営を実践する
第4章 価値観をつなぐ
第5章 日本型サスティナブル企業の経営を下支える三つの要素
おわりに
主な内容・著者の言葉
・日本に長寿企業が多い3つの理由、
①侵略や大きな内乱がなかった日本独特の歴史的側面
②和、創意工夫、伝統、質素倹約、勤勉を尊びつつ、他者を受け入れる日本の文化的側面
③日本的な経営の考え方の影響
・本書で取り上げる日本型サスティナブル企業(創業300年以上かつ年商50億円以上)は69社。69社の業態は、製造業(衣食住)54%、卸業/商社/百貨店33%、製造業(工業品)9%、その他4%。
・長寿企業は、300年という長期スパンで考えた時、時代、世代、事業という3つの大きな変化に対応して、生き残ってきた。
・時代の変化とは、自社だけでは対応できないマクロ環境の変化。政治、経済、社会、技術の4つの側面から考える。
①政治では、300年の間に、江戸時代の鎖国政策から始まり、明治維新で開国に舵を大きく切り替えた。その後日清・日露戦争を経て、第2次世界大戦での敗戦を経験し、想像を絶する大きな変化。
②経済では、江戸時代の長期低成長から明治時代の殖産興業での高成長、そして昭和恐慌を経て敗戦。戦後は高度経済成長を謳歌した後、バブル崩壊、リーマンショックという急激な景気変動を経験。
③社会では、江戸時代の封建社会から明治時代の文明開化で社会構造が大きく変わった。戦後は欧米流のライフスタイルが浸透し、衣食住をはじめ多くのものが様変わりした。近年では、価値観も多様化し、ライフスタイルを一つの姿で語ることができない状況。
④技術では、農業革命、産業革命、情報革命という3つの劇的な変化を経験した。
これらを乗り越えるためには、変化が比較的に少ない平時から事業継続への強い執念を持ち、有事を常に想定しながら経営していくことが必要不可欠になってくる。ポイントとして、平時も有事も事業継続のための「身の丈経営」にこだわる。
・世代の変化を乗り越える。長寿企業の経営者の在任期間は長く、20年から30年が多く見られる。300年にわたる事業継承では少なくても十代以上の世代の変化を経験。社員も同じ。世代というものは時代の影響を受ける。どの時代にも世代の壁が存在する。創業の志、価値観、理念というものは、企業のDNAであり、幾多の変化を乗り越えるための羅針盤であり、行動指針。ふたつ目のポイントは、日本型サスティナブル企業を支える「価値観」をつなぐ。
・事業を変化させる。顧客に受け入れられなければ事業継続はできない。300年という期間で見ると、顧客や商品・サービスなどの事業の内容も変化し続けている。日本型サスティナブル企業は、時代を超えて通用する独自のコア能力を持っている。コア能力と価値観に沿った「顧客価値」を提供することが、三つめのポイント。
・滋賀県近江八幡市にある株式会社扇四呉服店(創業1720年)の家訓に「貴賤貧富にかかわらず、他を侮辱する気持ち、驕りが心に起ったら、その時が衰退の始まりであり、衰退をもたらす諸々の問題はここから起ってくるものだ」。この言葉は、私の約40年現場で企業を見てきた経験からも間違いのない真理であると思う。
・日本型サスティナブル企業は、神様や伝統を敬う心を経営に役立てている。神事・祭事を通じて人智を超えた神の存在を感じることで、普段の言動に謙虚さや慎重さ生まれ、そして脈々と受け継がれて伝統を大切にすることで、日々の仕事に対する愛着や誇りを持つようになる。
・価値観に基づいた経営理念。創業者が持っている価値観がベースにあり、商いが小さいうちは暗黙知として組織内で共有されている。事業規模の拡大や地理的な広がりのタイミングで、経営理念や行動規範として価値観が明文化される。
・会社を超えて価値観をつなぐ。自社の価値観に基づいた行動で、社員が顧客、仕入先、地域など社外の関係者から感謝され、その価値観に自信を持つ。その結果、より深く価値観が浸透し、後世に伝える動機となる。
本書でいう300年以上の歴史があり、50億円以上の売り上げがある企業「日本型サスティナブル企業」の分析は、地域でまさに長寿・永続企業へ進もうとする企業経営者に参考になる。本書はヒントにあふれた一冊である。
永続的成長企業ネットワーク
代表理事    吉田正博
275303659_5244672378890473_419316257281935395_n