[永続企業へのヒント:この一冊』 ~藤森徹『あの会社はこうして潰れた』日本経済新聞社2017年~
[永続企業へのヒント:この一冊』
~藤森徹『あの会社はこうして潰れた』日本経済新聞社2017年~
・著者の藤森徹氏は、昭和38(1963)年生まれ。スポーツ用品メーカー勤務を経て92年帝国データバンク大阪支社入社。倒産を扱う「情報部」で25年間企業取材を行う。大阪支社、福岡支店を経て東京支社情報部長を務めた。著書に「御社の寿命」(共著、中央公論社)。
内容紹介
・77億円を集めた人気ファンド、創業400年の老舗菓子店、名医が経営する病院―。あの企業はなぜ破綻したのか?トップの判断ミス、無謀な投資、同族企業の事業承継失敗、不正、詐欺など、ウラで起きていたことをつぶさに見てきた信用調査マンが明かす。倒産の裏側にはドラマがある!
・企業経営失敗事例をリアルに描いた本書は、企業の持続・永続を考える視点からも、反面教師としてヒントに満ちている。
目次
第1章 構造変化に呑まれた企業はこうなる
第2章 老舗企業のたどった末路
第3章 あの上場企業はこうして潰れた
第4章 ベンチャー企業はどこでつまずいたか
第5章 捨てられる会社、捨てられる社長
第6章 闇経済、不正、詐欺の舞台裏
第7章 出版業界のタブーに迫る
第8章 あなたもその倒産に巻き込まれる
主な著者の言葉
・帝国データバンクが保有する企業データベースによれば、老舗といわれる「業歴100年企業」には3つの特徴があることが分かっている。1つ目が事業承継(社長交代)の重要性。2つ目が取引先との有効な関係。3つ目が「番頭の存在」。
・老舗企業は絶対安泰ではなく、本書の中でも「老舗企業のたどった末路」(第2章)として老舗企業の倒産が取り上げられている。
・4兄弟に別れた老舗・千鳥屋東京の長男系、破たんの裏側。創業380年の社歴を持つ和・洋菓子メーカーが至った理由は、知名度のある製品でなく、あまり知られていない製品を1社依存で販売してきたことにあった。
・和菓子の駿河屋 破産した500年企業の不徳。創業寛政2(1461)年「煉り羊羹」を生み出した和菓子の名門。架空増資で創業家20代目社長が逮捕される事件をきっかけに転落。株式上場があだとなる事件、歴史を背負うはずの社長の見通しが甘く、海千山千の投資コンサルタントに目をつけられたが発端、会社側は「だまされた」とする事件。しかし、本質は「信用」の意味を見失ったことにある。上場維持による信用と、500年を超える「のれん」の信用。どちらがより重要で、守るべきなのか、駿河屋は取り違えてしまった。
・老舗婦人靴卸のシンエイ 百貨店業界の商慣習に沈む。1949年創業の老舗で全国の百貨店に婦人靴卸を手掛けていた。業界をめぐる環境変化に企業は事業構造を見直すことで生き残りを図る。ところが、シンエイは売上げの減少(ピーク時の3分の1)にも、そのためのリストラに踏み切れなかった。なぜ事業の見直しに踏み切れなかったのか。業界の2つの商慣習。1つは「マネキン」の存在。百貨店との取引が大半を占める当社は収益性の低い百貨店にもマネキンを維持、売上げ減少にもかかわらず人員削減が進まず収益悪化。もう1つが委託販売制度。売れ残りのリスクを背負い、アパレルと百貨店との取引で慣習化された委託販売が生む過剰在庫リスクが原因となった。
・百年の老舗紙問屋加賀屋 社員不正に大甘対応で信頼失う。本業以外への過剰な投資、取引先の倒産による不良債権の発生、経理担当者の着服と甘い対応が重なり100年を超える歴史に幕を下ろした。
・そのほか、本書では、産業構造の変化、高齢化による人手不足、不正会計など破綻の現場からわが国の経済・企業の抱える問題が浮かび上がる。
・企業の長寿・永続へのヒントが、学びとれる一冊。