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[永続企業へのヒント:この一冊』 ~前川洋一郎『なぜあの会社は100年も繁盛しているのかー老舗に学ぶ永続経営の極意20』PHP研究所~
[永続企業へのヒント:この一冊』
~前川洋一郎『なぜあの会社は100年も繁盛しているのかー老舗に学ぶ永続経営の極意20』PHP研究所~
・著者の前川洋一郎氏は、老舗ジャーナリスト。1944年、大阪府生まれ。神戸大学経営学部卒業後、松下電器(現・パナソニック)入社。経営企画室長、eネット事業本部長、取締役などを経て2005年退社。高知工科大学大学院で学位取得後、関西外国語大学国際言語学部教授、大阪商業大学大学院特別教授、流通科学大学商学部非常勤講師などを歴任。現在老舗学研究会共同代表、大阪商業大学大学院非常勤講師。著書に、『老舗学の教科書』(共編著、同友館)、『カラオケ進化論』(編著、廣済堂)などがある。(2015年出版時)。
内容紹介
・著者は、8年間にわたって全国の老舗約750社を訪問し、そのうちの371社のトップに直接取材した。そして老舗の主人や女将と向き合うなかで、家訓や暖簾といった受け継がれるシンボリックなものの奥に隠された真の教えや、本当に言い伝えたいことを探ってきた。その老舗の声から永続繁盛の秘訣を明らかにし、それらを再構成して体系づけることが本書の試みである。この新たな試みは、「老舗学」として、中小同族企業における現場の教えと経営学をわかりやすく橋渡しするものとなるだろう。(「はじめに」より)
本書の構成
第1・2章は事業承継、第3・4章は組織・資産、第5・6章はイノベーションとガバナンス、第7章はフィランソロフィーとマネジメント、第8・9章は外部との関係、第10章は永続繁盛についてまとめている。
目次
はじめに
第1章 駅伝襷経営
第2章 家伝社伝経営
第3章 暖簾資産経営
第4章 木姿剪定経営
第5章 進化変身経営
第6章 番頭・女将の副の経営
第7章 日本型理念経営
第8章 縁絆ネットワーク経営
第9章 地域おこし経営
第10章 守成繰り返し経営
おわりに
主な著者の言葉
・第1章では、老舗の経営者には、先代たちの築き上げてきた伝統を考えると、事業を勝手にやめることができないという意識が強い。ある経営者は、「好きで老舗の経営にしがみついているのではありません。駅伝の走者となった運命から逃げられないのです」と述べていた。「(会社は)先祖からの預かりものというより、子孫への預かりもの」という信念。
・第2章では、民法の「家」相続・家伝と商法の「会社」承継・社伝は不即不離である。老舗が承継すべきは「家(家督)」だけでも「会社(事業)」だけでもない。承継の意思決定は、「理の入り口」と「情の出口」を通らなければならない。「家」を相続し「会社」を承継する「家伝・社伝」は、世の道理にかない、人の情に添うことである。
・第3章では、暖簾は自分のものであって自分のものではない。暖簾は永久に離せないし、離れない。それでいてお墓に持っていけない。次の人に引き継ぐものである。
・第4章では、老舗は眼にみえないところの新陳代謝でしっかりした木姿を整える。経営資源はもとより、商品サービスの成果物も日々古いものを取り去り、新しいものに入れ替えていくことが大切である。ありたい姿を想定し、「下刈り」「葉刈り」「枝落とし」の剪定でよい木姿をめざす。
・第5章では、老舗の生き残りは、伝統を守りつつも、何らかのかたちで進化変身を遂げてきた。イノベーションは技術だけではない、サービスや業態にもある。身の回りの一つひとつから広く考えてみることが大切だ。業界の川上・川中・川下に学び、小さな変化の予兆を発見しよう。
・第6章では、番頭・女将は私心を捨てて「ならぬものはならぬ!あかんものはあかん!」と諫言する。番頭・女将はあくまで「副」。組織を円滑にするサポーターシップと補佐機能を担う。
・第7章では、家訓・経営理念は飾りものではなく、社会への決意表明である。家訓・経営理念の承継に、相続税はいらない。
・第8章では、老舗は群れてこそ、お役立ち度が高まる。一つひとつは小さくても、集まれば力となる。縁と絆を活かした老舗のネットワークで地域のために汗をかこう。
・第9章では、老舗は地域社会のシンボルであり、地域文化(歴史・経済・生活)のバロメーターである。老舗は地域の代表として経営はもちろんのこと、日々の品行も恥ずかしくないように努めるべきである。地域おこしの汗かきは、地域のためのみならず、我が身に返ってくるものである。
・第10章では、商い・経営はよいときもあれば悪いときもある。攻めたり守ったり「老舗の形体」を繰り返していく守成が老舗経営の奥義である。守成には、伝統を守るという保守的側面だけでなく、新しい変化に挑戦する革新の面も必要だ。老舗の経営者は、保守と革新、不易と流行のカジとりがたいせつである。
・老舗だからといって安心は禁物である。しっかり生き残っている老舗はどうしているのか。事業承継、業態転換、ビジネスモデル刷新、縮小転身、確信導入など本業の中でしっかりと手を打っている。
「老舗学」を提唱した著者ならではの一冊。まさに著者のいうように、老舗は、社会的責任を果たしている限り、世間から永続繁盛することを望まれるだろう。
永続的成長企業ネットワーク
代表理事    吉田正博
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