マイ・オピニオン:[帰省日記]>
『郷里の商店街に思う(6)』
・8月1日、出身高校の同窓会総会で「まちづくりをどのように考えるのか」をテーマに話をすることになり、数日間、帰省した。年配のOB・OGが多数出席していたが、同級生も多く、感謝の気持ちになった。商店街よりも市レベルでのまちづくりを中心にしたストーリーにした。役所主導のまちづくりだけでなく、市民、企業、NPOなどによる創発型のまちづくりをすべきであり、「よそ者、若者、ばか者」そして「女性」の力を発揮させることが大切であると述べた。要するに、草の根のもつポテンシャルを活かすという創発型のまちづくりに期待しなければならないという趣旨にした。
・パーティーのあと、地元で企業経営を行っている親しい同級生が新しく完成したショッピング・モールに案内してくれた。いま売りだし中の日本ハムの大谷選手を輩出した高校に隣接している地域に立地している。モールの中核となる店舗は食品であるが、品揃えも多く、きわめて大きなスペースになっている。比較的近い地域に大規模な商業施設があり、競争関係がどうなるのか気になった。
・このモール構想がかなり進展している1年以上も前のときに、商工会議所の会頭から意見をもとめられたことを思いだした。やはり帰省の折に会頭に偶然お目にかかり、この構想のあることをうかがった。そのときの私の回答は、市の人口や消費金額が増加することが考えられない状況のなかで、新たなショッピング・モールを認めれば、まちの中心街となる商店街の衰退に拍車がかかるだけでなく、既存のショッピング・モールへの影響がでることが予想されるというものであった。そして、むしろ生鮮3品の店舗がなくなってしまったために、中心街に居住する高齢者が“買物難民化”しているので、中心街にミニ・スーパーを設置することが大切であるとも述べた。
・また、立地した場所は高校のほか、公共のスポーツ施設などがあり、商業施設が隣接することにも若干違和感をもっていた。教育やスポーツなどの文教関連施設のほうが重みをつくるという意味で、効果的ではないかと思っていたのかもしれない。
・新しいショッピング・モールがどのように発展していくのか、他のモールや商店街にどのように影響を与えていくかは、もう少し推移を見ていく必要があるのだろうが、大規模な商業施設は消費者を便利にする反面で、どのような効果をまちに及ぼしていくのかについては心配である。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授 斎藤毅憲
[2015.9.7]