[お役立ち情報]
一橋大学大学院教授 伊藤邦雄氏の講演
『いまこそ問う、持続的価値創造のあり方』
~日本企業の企業価値を磨きあげ、持続的なものとするため現状と方向性について、お話しをお聞きしてきました~
■現在の日本企業の状況と課題
・「アベノミクス」第1の矢・第2の矢が奏功し、「第3の矢」に必要なものは、企業の持続的成長・持続的価値創造。
・持続的成長とは、中長期的あるいは継続的に企業価値が高まっていくこと。
・持続的成長のイメージとして、短期的な変動はあるが、企業のファンダメンタルズあるいは中長期的な経済価値が向上していくこと。
・企業価値創造度の国際比較で、日本企業のPBR(株価純資産倍率)は過去低水準にとどまっていたが、最近(2013年12月末)では、1.5と上がった。しかし、まだ先進国2.2、米国2.8、インドネシア3.4南アフリカ2.8、インド2.5と比べると低水準。
■日本企業のパラドックス(謎)
・最もイノベーティブな国だが持続的低収益性。これは、企業価値経営が欠如・希薄。
■「企業価値」とは
・企業価値A:ステークホルダーにとっての価値であり、株主価値、顧客価値、従業員価値、取引先価値、社会コミュニティ価値などから構成される。その総和が企業価値ともいえる。
・企業価値B:経済的価値・株主価値として株式価値総額や企業が将来的に生み出すキャッシュフローの割引現在価値(DCF)等に焦点を当てる。
■日本企業の経営理念に見る価値観
・企業は誰のために?広田真一(2012)『株主主権を超えて』は、「社是・社訓」を調査し、上場企業の経営理念で記載されているステークホルダーの割合を調査。
・日本においては、顧客(85.6%)従業員(41.3%)が主たるステークホルダーだと考えられている。
・近年、株主を重視している企業(23.1%)も増え始めている。
・因みに、地域社会(15.6%)取引先(10.5%)。
■企業価値はいかにして作られるか
・企業価値は2つの市場の競争力、顧客市場競争力と資本市場競争力が高いレベルで同期化したとき、創られる。
■2つの「付加価値」と企業価値
・価値創造とは、付加価値を最大化すること。
・付加価値A:企業活動にかかわるステークホルダー全般への価値の分配総額と捉える考え方。
・付加価値B:株主以外のステークホルダーに対する分配額を利潤から差し引いた余剰額(=当期純利益)が資本コストを上回った残余部分と捉える考え方。
・日本企業が国際的に投資家から支持を得るためには、付加価値Bにもっと焦点を当てるべき。
■すべては企業価値のために
・企業価値の観点からの中長期ビジョン(価値創造シナリオ)の策定
・企業価値を高めるための一貫した経営
・資本コストを意識した経営
■パラドックスのもう1つの要因
・最もイノベーティブな国と持続的低成長性は、経営の短期志向化と企業価値経営が欠如・希薄からきている。
■企業価値は企業と投資家の協働によって生まれる
・持続的成長は企業と株主との協創(協調)の成果と捉えるべきで、株主が成長の後押しをしていることを経営者も事業責任者も認識すべき。
・もし内部留保を成長原資として活用できないのであれば、それは「持続的成長」という共通目的の破たんであり、内部留保の活用の仕方を再検討(例えば配当ないし自社株取得)すべき。
本稿は、平成26年3月11日開催の
「ニッポンの企業力―企業価値を考える2014―」の受講メモである。(上場企業対象のお話しであるが、中小企業にも非常に参考になると思われる)