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【特別コラム】『CSRのカギは、会社の実践構造(第6回)』

【特別コラム】『CSRのカギは、会社の実践構造(第6回)』

6.自社の実践構造をつかむには?
― 共分散構造分析 ―
・自社のCSR実践構造は、「共分散構造分析」によって導くことができます。もちろん、つながりだけでなく、それがどれほどのつながりなのかも数値で示すことができます。実際の企業の場合、それに基づいて、効果的なCSRの戦略を構築することができます。
・前回の例のように、効果的CSRを導くための社内の「つながり」(つまり「実践構造」)が分かっていれば、限られた経営資源を効果的、効率的に、用いることができます。
・しかも、会社によって実践構造は異なりますから、外部に取り組み情報が洩れても、他社に取り組みをまねされても、他社に出し抜かれ、顧客を取られるなどと言うことにはなりません。

― 中小零細で可能?―
・では、分析をおこなうためには、どのような手続きや手順が必要なのでしょうか?基本的には、社員に対するアンケート調査やヒアリング、経営層に対するヒアリングなどが必要になります。その上で、社内からとったデータを分析にかけることになります。
・しかし、統計学の知識がある社員がいない場合、適切な分析を行い、「実践構造」を導くのは、難しいものがあります。また、「実践構造」についての研究は、他に見ないので、少なくとも研究者で行っている者はほとんどいないと思いますし、おそらく、コンサルタントなどで分析ができるという業者もほとんどいないと思われます。
・そもそも、中小零細企業では、資金的制約が大きいので、外部の業者に任せるほど余裕がないことが一般的です。では、特に中小零細企業では、実践構造を把握するのは、諦めねばならないのでしょうか?それは、「NO」です。

― 作図のセンスが重要 ―
・研究論文を書き、学会で発表するわけではありませんから、厳密な数値まで導出しなくとも、「こんな感じになっているのでは!」と言えるレベルの作図ができればよいと思います。
・前回の図を見てみてください。前回の図は、共分散構造分析にかけたものですが、数字が入っていません。意図的に削除してあるのですが、この図を打ち出す前にも、私は同様の図を作図していました。どのような手続きで作図していたかというと、この実践構造を持つ会社でヒアリングを行って導き出していたのです。
・つまり、ヒアリングを行う際に、実践構造を把握するポイントを押さえながら、その場で、「この会社の実践構造は、こんなふうになってるんじゃないか」と考えながら図を書いて行ったのです。
・そのうえで、その企業のデータをもとに分析にかけてみると、考えながら描いた図とほぼ同じような図を導くことができたのです。

― ポイントは社員 ―
・上記のように書くと、実践構造を把握するためには、特別なポイントを見なければならないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、ヒアリングに基づいて作図する場合も、私は、研究によって得た様々な知識を駆使しますが、難しく考える必要はありません。企業からご相談を受け、効果的CSRの提案を行うためには、あまり大雑把な作図ではいけませんので、神経を使いますが、自社の実践構造を把握する場合、あまり神経質にならずともよいです。少し違うなと思ったらすぐに軌道修正もできます。
・自社の実践構造を把握するために何が大事かと言えば、自社のCSRの実践部隊が社員だとすれば、社員をよく見ることです。社員のことが分かっていなくて、よいCSRを導くことはできません。
・社員がどうしたらCSRを実践的に理解できるか、どうしたら前向きに取り組めるかは、社員自身が答えを持っています。
・そういう意味で社員を大事にする会社の業績が良かったり、よいCSRを実践できているのは、当然と言えば当然です。

・本シリーズを参考に、大まかであっても自社に実践構造を把握し、よいCSRに取り組んでいってください。
「CSRのカギは、会社の実践構造」おわり

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学CSRセンター長
影山 摩子弥