お役立ち情報詳細


【特別コラム】『CSRのカギは、会社の実践構造(第4回)』

【特別コラム】『CSRのカギは、会社の実践構造(第4回)』

4.実践構造とは何か?
― モチベーションを上げる! ―
・利害関係者の評価を得るような効果的CSRを実践するためのモチベーションは、どのように形成したらよいのでしょうか?次のように考えたらよいでしょう。
・CSRは業務の一環ですから、CSRの実践がよいものであるかどうかは、社員の業務パフォーマンスが高いかどうか(自分がやるべき仕事ができるかどうか)にかかっています。
・業務パフォーマンスを上げるためには、仕事に対する満足度が高かったり、会社や経営者に対して肯定的評価や感情を持っていたり、精神健康度が高かったりする必要があります。
・では、それらの要素を高めるにはどうしたらよいでしょう?ズバリ、「参加型の地域社会貢献」が有効です。参加型の地域社会貢献とはたとえば次のようなものです。
事例1:雪国なので、冬になると社員がボランティアで、独居老人宅の屋根の雪下ろし作業をしている。
事例2:地域のNPOやこどもたちと一緒に、公園や街角、川の清掃を半年に1回、社員総出で行っている。

・なぜ、参加型の地域社会貢献がよいかというと、次のような理由に寄ります。
・社会貢献のためには、社会的意義、経営上の意味、ストーリーという3つの意味が必要です。参加型、特に準備段階から参加し、経営層に経営上の意味を説明し、社内や地域社会にストーリーや社会的意義を説明することによって、3つの意味を深く理解することができます。しかも、社会貢献活動の社会にとっての意義や効果が、自分の参加でもたらされたものであるので、充実感を覚えます。
・また、なぜ地域性がよいかというと、地域での活動は、目の前で行われるので、3つの意味のうち、特に社会的意義を見やすくします。つまり、地球の裏側の人が助かっても、日本にいる社員には見えません。実感を持って体験することは難しいと言えます。しかし、目の前の地域であれば、地域の人々の感謝の声が聞こえてきたり、きれいになった地域が目の前で見られたりします。つまり、参加の効果がより確保できるのは、地域性がある場合なのです。

― 実践につながる要素のつながりが「実践構造」 ―
・前回と今回で、CSRの実践的理解とモチベーションお話をしてきました。社員の効果的な実践のためには、実践的理解とモチベーションが大事であり、実践的理解とモチベーションを高めるには、効果的な方法があるというお話でした。ここまで来ると、もうお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、会社の中には、社員の実践(業務パフォーマンス)を高める要素のつながりが存在するのです。このようなつながりが、「実践構造」です。
・しかも、その要素のつながりは会社によって異なるのです。規模が小さければ、社長とのコミュニケーションが実践的理解を高めるかもしれません。しかし、社長とコミュニケーションを取りにくい会社であったり、社長の求心力が低くかったりする場合は、別の方法の方が望ましいかもしれません。
・したがって、「実践構造」は会社によって異なるのです。ですから、他社が社員の実践的理解を深めたり、モチベーションを上げたりするのに成功しているからと言って、その取り組みをまねてもうまくいかないことが多々あります。うまくいくとすれば、ただの偶然です。うまくいったと喜んでいても、「なぜうまくいったか」理解できていないで、応用が利きません。つまり、経営戦略・事業戦略が作れないのです。
・日本の中小企業は、技術力が長けており、世界に負けない企業がたくさんあります。しかし、戦略がないのです。それゆえに、グローバル化のなかで、後発国の企業の後塵を拝することにもなるのです。
・「実践構造」を把握することこそ、CSRの戦略を構築するには、不可欠なのです。
・次回は、この「実践構造」について、現実の企業の事例を参照しつつ解説してみましょう。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学CSRセンター長
影山 摩子弥