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【特別コラム】『CSRのカギは、会社の実践構造(第3回)』

【特別コラム】『CSRのカギは、会社の実践構造(第3回)』

3.実践理解とは何か?
・社員が、業務の中で、効果的で望ましいCSRを実践するために必要な2つの要素とは、理解とモチベーションです。CSRを理解していなければ、実践できませんし、やる気がなければ(モチベーションが低ければ)、理解していても、よい実践につながりません。

― 実践的理解がポイント ―
・理解が必要というのであれば、CSRの入門書を買ってきて読んだり、講演を聞きに行ったりすればよいのでしょうか?いいえ、それも必要ですが、効果的なCSRのためには、不十分です。では、どういう理解が必要なのでしょうか?それは、実践的理解です。
・実践的理解とは、仕事の中で自分がどのようにふるまうことがCSRなのかを自分で考え、具体的イメージを作ることができ、そのイメージに従って、業務の中で実践できるまでに至っていることを言います。しかし、問題があります。
・社員のそれぞれが「これこそCSRだ!」と勝手に考えたイメージを実践したらどうなるでしょう?会社はバラバラになります。社員によって、顧客や取引先への対応が違う場合もしばしばとなり、かえって顧客や取引先の不信を買います。
・このような事態に至らないためには、社員がCSRを考える際に、よりどころとなる共通の柱、つまり、共通の価値観や判断基準が必要です。このような共通の柱となるのが経営理念です。社是や社訓などもその1つです。明文化されている場合もありますが、いない場合もあります。また、社長の思いや方針という形をとる場合もあります。

― 落とし込むためには ―
・ただ、経営理念があればよいわけではありません。社員にとって考え方の軸になるよう、社員の中に落とし込んでいなければなりません。その状態をもって、「経営理念が社内に浸透している」と表現されることになります。では、経営理念を落とし込むためには、どうしたらよいでしょう?
・よく見られる方法は、まず、社長が、自社の経営理念や自分の思いが、どのような意味でCSRとつながっているのか、経営理念や思いを業務に具体化したらどうなるか、それがどういう利害関係者の期待に応えることになり、どのような効果が自社にありそうかについて語ることです。特に、社員の判断や行動の例でもって、その判断や行動が経営理念や自分の思いにつながっていてよいことを指摘したうえで、どういう点がつながっているか、どういう意味でCSRなのかを説明すると良いです。説明する相手は、その行動をとった社員だけではだめです。広く社内で共有します。また、悪い例についても、なぜ悪いかを説明します。もちろん、それも社内で共有します。ただし糾弾という形をとってはいけません。
・このようなことをしていると、社員が、自分の業務の中で何をすることが経営理念に沿うのか、CSRにつながるのか、のイメージができていきます。その結果、経営理念を具体的業務のレベルで理解することができるのです。それが実践的理解です。

― 社員間のコミュニケーションも大事 ―
・規模の小さな企業でない限り、社長が社員とそれほど密接な関係を作ることは容易ではありません。そのような企業で、経営理念を社員に落とし込むにはどうしたらよいでしょう?
・社員に経営理念を落とし込む有効な方法として、社員間のコミュニケーションを指摘することができます。自分はこのようにすることが経営理念に沿うことになると思う、CSRだと思う、顧客に喜んでもらうにはこういう行動が大事だと思う、という意見交換をしたり、アドバイスを聞いたりすることによって、自分の業務の中でCSRを理解し、経営理念に沿った業務をイメージすることができるのです。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学CSRセンター長
影山 摩子弥