お役立ち情報詳細


【企業永続へ:経営者に贈る言葉⑮] ~「私のリーダー論」からの言葉~
【企業永続へ:経営者に贈る言葉⑮]
~「私のリーダー論」からの言葉~
・逃げない、決める、責任をとる。リーダーの条件はこの3つのルールを守ることだと思います。(大和証券グループ本社・中田誠司社長)
・リーダーは方向性を示し、組織を整え、権限委譲を進め、自らは模範を示す。(味の素・西井孝明社長)
・目標に向かって組織を強く引っ張る力が不可欠です。(日本ガイシ・大島卓会長)
・先を見すえ、ぶれずに芯があり、誠実であること。(石坂産業・石坂典子社長)
・組織が進むべき方向性を示し、ぶれることなく実行することです。(三井不動産・菰田正信社長)
・・・・・・・・(以下 日本経済新聞記事から)・・・・・・・・・・
混迷の時代のリーダー像 企業トップの言葉にヒント
私のリーダー論(特別編) (日本経済新聞:2021年9月30日)
新型コロナウイルス、国際情勢の変化、地球温暖化による異常気象――。世界規模で先行き不透明な日々が続いている。日本では首相交代も控え、リーダーの在り方が改めて問われている。これまで企業トップらが経営哲学やリーダーシップについて語ってきた連載コラム「私のリーダー論」の中から、混迷の時代の羅針盤となる言葉を探してみた。
「逃げると信頼失う」(大和証券グループ本社・中田誠司社長)
――リーダーとして意識していることは。
「逃げない、決める、責任をとる。リーダーの条件はこの3つのルールを守ることだと思います。どれも当たり前のことですが、毎日きちんと実践できているか振り返ることが大事です。私は主に夜、布団に入ったときに自問自答しています」
「部下は上司が逃げることについて特に敏感です。何かから逃げる気持ちがあるだけでも信頼を失いかねません」
――リーダーの原点になった経験は。
「初めて部店長職に就いた40歳代前半、週末に部下40人の身上調書を持ち帰り、丸2日かけて暗記しました。ご両親がお元気か、お子さんはいるか、いるなら何歳か。こうした情報を頭に入れ、例えば『きょうは息子さんの誕生日だろう、早く帰っていいぞ』と言えるようにしていました」
「宮仕えの身である以上、部下は上司を選ぶことはできません。上司は部下の人生の一時期を担い、その後の人生を変えてしまうかもしれません。だからこそ部下のことをよく知り、その上できちんと仕事にかかわる指導をすれば、会社員人生をより良い方向に導けるかもしれない。そうして互いの信頼関係が強まれば、組織も強くなります」
「意地を持って継続」(味の素・西井孝明社長)
――どんな目標を持ってキャリアを築いたか。
「最初から『こういうリーダーになろう』という、リーダー像を意識して持っていたわけではないんです。ただ、振り返るとリーダーになりたいと思うきっかけになるような出来事がいくつかありました。より良い仕事をする、より良い商品を届けていく。自分の仕事で提供するバリューを上げるためには、価値を創造しないといけません」
「職務が上の方がチームワークで仕事をしてより大きな成果を出せる。仕事で成果や価値を創造しようと思えば、必然的に上のキャリアを目指すことになるでしょう」
――理想のリーダー像は。
「まずリーダーは方向性を示し、組織を整え、権限委譲を進め、自らは模範を示す。このサイクルを回しながら鍛えられた結果、生まれてくるのがリーダーシップだと思います」
「夏目漱石の草枕に『意地を通せば窮屈だ』という一文があります。しかし、リーダーがビジョンに向かって組織を引っ張るには、意地を持ってやり続けないと組織はなかなか動きません。そして意地を通そうとするときほど、周囲との信頼関係が重要になります。信頼関係はお互いの持ちつ持たれつの積み重ねで培われるものです」
「仕事したい組織に」(日本ガイシ・大島卓会長)
――リーダーに必要な資質は。
「目標に向かって組織を強く引っ張る力が不可欠です。トップが簡単にぶれていては、従業員からの信頼は得られません。課題を明確に打ち出し、戦略を示すことが重要だと思います」
「現場に任せきりもいけません。自ら現場に足を運んで、何が起きているのかを把握することはトップになっても大事だと感じました。現場を感じ取るような小さなアンテナを張ることで、新たな課題が見えてきます」
「大企業のトップに共通する部分があります。それぞれ個性がありますが、総じて明るくて責任感も強く、みんなに信頼されているからこそ選ばれたのだと感じます」
――会社の成長に必要なことは。
「上司に言われてやるのではなく、本人が仕事をやりたくて仕方がない、と思えるような組織になれば、自然と成長につながるはずです。そんな従業員が生き生きと働ける会社をつくるのは社長の責務です」
――リーダーを考えるきっかけは。
「昔からアイデアを出すのが得意で、小学生では学級委員長でした。親が教員だったこともあり、人はそれぞれ違う能力があり、それを生かすことが大切だと教えてもらった記憶があります。自由の裏には責任があることも学びました」(掲載当時は社長)
「社員の視点に立つ」(石坂産業・石坂典子社長)
――良いリーダーの条件とは。
「先を見すえ、ぶれずに芯があり、誠実であることでしょうか。社員はリーダーの口から、未来の話こそ聞きたいのではと思うのです。想像できないような遠い先に、世界はどうなっているか。自分たちはどんな役割を果たせるか。単に会社の将来の話だけでは、若い人たちは自発的に動いてくれません」
「日々、社員から人間性をみられています。責任感はもちろん必要ですが、事業への前向きな使命感をもっているかどうかが大事ではないでしょうか。それと情熱です。どれが欠けてもリーダーは難しいと感じます」
――若い社員のやる気を引き出す秘訣は。
「成長の場と機会を与える。そのための失敗体験と適材適所でしょうか。例えば新入社員には60時間の研修があります。先生役は若手の先輩社員。後輩に仕事の方法をうまく伝えるためには、自分自身で仕事を理解する必要があります。役員会での説明を任せることもあります」
「視点や視座を変えることも心がけています。地域の環境づくりに貢献する企業として、全国から理念に共感する若者が集まってくれます。この会社で自分がどう成長できるか。仕事は成長のツールです。社員自身の視点に立ち、次のステップに行く道を一緒に考えるようにしています」
「輝かしい未来語る」(三井不動産・菰田正信社長)
――コロナ下のリーダーに何が必要か。
「組織が進むべき方向性を示し、ぶれることなく実行することです。会社が厳しい時こそ、夢のある大きなビジョンを描くのです。不安な従業員らに対し、自分たちが何をやるべきなのかを伝えつつ、苦しい局面を乗り越えれば輝かしい未来が待っていることを語ることが大切です」
――コロナ下で見えてきた課題もある。
「この先も変わらないと思うことには信念を貫きたい。『人々の暮らしを豊かにすること』です。新型コロナで改めて大事な点だとわかりました」
――リーダーとして心がけていることは。
「思ったことを現場に早く伝えることです。なるべくシンプルな表現を心がけています。2012年ごろに建築コストを全面的に見直した時のことです。『発注している金額の1割増しで収支計算を立てて土地を買うように』と指示しました。建築コストが将来必ず上がると考えたからです」
「時には自分の考えを誇張して表現しないと伝わらないことがあると思っています。『まだ建築コストは上がっていない』『1割増しにしたら土地が買えない』といった反対もありましたが、『1割増し』を実行しました。リスク管理を徹底したことで、今後オフィスビル市場が崩れ、低金利の局面が変わっても耐えられると思います」