・障害者雇用促進法が改正され、2013年4月より、企業が雇わねばならない障がい者の割合が2.0%となりました。従業員50名以上の企業は雇用義務が生じます。しかも、2018年より、精神障がい者の雇用も義務化されます。図1-1に見られるように(注1) 、年々、精神障がい者の求職申込件数が増えているからです。その背景には、新自由主義的政策が進む中、精神障がい者が急増していることがあります。その現状から、企業が精神障がい者を量産しているイメージすらわきます。
・しかし、障がい者の雇用の状況は芳しくありません。図1-2は、企業規模別の平均雇用率です。いずれも2.0%に満たない状況です。また、図1-3は、企業規模別に、法定雇用率を達成している企業の割合を見たものです。いずれも50%をはるかに下回っています(注2) 。
・障がい者は経営の負担になる、障がい者に切り出す仕事などない、危険な現場なので怪我でもさせたら、障がい者に慣れていない、接客業なので、などの理由で、多くの企業が雇用に及び腰になっていることが伺えます。
・しかし、障がい者は、企業の経営を改善する力を持ちます。それに気づいて、法的義務がないにもかかわらず、もしくは、法的義務を大きく超えて、障がい者を雇用している中小企業がたくさんあります。
・現代は、社会性が重要な経営戦略となる時代です。ここで言う社会性とは、社会課題に答える事業のことで、一般的には、社会貢献活動やソーシャルビジネスと言われている事業です。現代は、そのような事業が、企業の経営を続けていくために不可欠の取組みになっています。その意味で、社会性が経営戦略に合っているということができるのです。
・このシリーズでは、社会課題に答える取組みと言える障がい者雇用が重要な経営戦略になることを、中小企業の事例を中心に紹介しながらお伝えしていきたいと思います。
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注1 厚生労働省『平成24年度障害者の職業紹介状況等』より作成
注2 図1-2、図1-3ともに、厚生労働省『平成25年障害者雇用状況の集計結果』より作成
永続的成長企業ネットワーク理事
横浜市立大学教授 影山摩子弥