お役立ち情報詳細


[特別企画]『「本」からみた横浜の経営者(第2回)』

10414379_777810798910009_5595759398077347519_n

[特別企画]
『「本」からみた横浜の経営者(第2回)』

山戸里志(2009)『御手洗銀三のトイレコロジー』株式会社アメニティ刊

山戸里志社長が起業したのは、33歳であった1975(昭和50)年のことであるが株式会社アメニティの設立は、1989(平成元)年である。Bネーム(仕事上の名前)が「御手洗銀三」であり、名字に示されているようにトイレ関連のビジネスを展開してきた。
事業内容はトイレの環境改善を目的とした専門店で、トイレの4K(臭い、汚い、暗い、怖い)問題を究明するためのトイレ診断、4K問題を解決するための予防メンテナンス、トイレの環境改善に必要な商品開発を主要業務としている。それと上下水道の水回りの環境づくりがもうひとつの業務内容であり、具体的には上下水道施設全体が消費する使用水量の適正化をとり扱っている。このように同社は、独自の製品・システムによるトイレの総合的なメンテナンスを事業としているが、FC(フランチャイズ)展開を行っており、その本部としての役割をも果たしている。
アメニティ(amenity)とはいうまでもなく快適さ、心地の良さの意味で、これを社名とする同社は、トイレの「プロ集団」(トイレ診断士、トイレ管理士、節水診断士)として、4K問題の解決に貢献している。『御手洗銀三のトイレコロジー』は、2001年1月から2009年9月までに1か月間おきに書いてきたコラム(エッセー)53編を収録し、会社設立20年の記念として公刊されている。
すべてはトイレへの思いが熱く語られており、トイレのアメニティをよくしたいという願望で貫かれている。「飲食店を選ぶ条件」(2005年9月)でも、お店のトイレの清潔さは大切であるとし、「トイレの維持・管理はコストか投資か」(2005年11月)などは、集客力のアップを考える企業経営者にとってヒントになる話である。御手洗の思想はビジネスのためだけでなく「日本が衛生管理後進国にならないために」(2003年7月)、「“連れション”の効用を説く」(2003年11月)、「津波の被災地に日本から浄化槽の整備を」(2005年3月)など、きわめて広く、簡潔な言葉のなかにも深いものを感じさせている。
私も神奈川区羽沢町にある同社を訪問し、「トイレ診断士の厠堂本舗」と名づけた公衆トイレを利用させていただいたが、「渋谷区役所前トイレ診断士の厠堂」、「新横浜駅前トイレ診断士の厠堂」、「京都東山トイレ診断士の厠堂」なども本舗となっており、一度利用してみたらいかがでしょう。同社はトイレを楽しくする新聞『かわや版』―『かわら版』でない―を季刊で発行している。
私は社長の名字のうち、戸をいただき、「戸入無臭」(トイレムシュー)と勝手に名をつけたが、4K解決は、日本だけでなく、世界を清潔にするものであり、同社の発展を応援しながら見ていきたいと思っている。

永続的成長企業ネットワーク理事
横浜市立大学名誉教授 斎藤毅憲